空き家問題は拡大が必至~他人ごとでは済まされない時代に

全国で世帯の数しか家がなければ、どこにも引っ越すことができず、住宅ストックとしての空き家は不可欠ですが、現在はその数が問題視されています。

住む場所を失い、路上で生活する人がいる一方で、誰も住んでいない空き家は何百万戸もあるのですから、何だか不思議な気がしないでしょうか。

将来は、全国平均でも両隣のどちらかが空き家になる?くらいのペースで空き家は増え続けており、空き家問題は拡大していくと考えられています。

現に空き家の所有者になっている人だけではなく、今は空き家問題など関係ないと思っている人も含め、極論では全国民が空き家問題と関係しており、家に住んでいる以上、いつかは空き家を生み出すのです。

そのような中、空き家問題を解消しようとする動きも見られ、時代は常に動いています。空き家問題の現状とこれからをテーマにしてみました。

空き家数と空き家率の推移

まずはこのグラフを見てください。


※データ:住宅・土地統計調査(総務省統計局)

総務省統計局が公表している住宅・土地統計調査によると、平成25年の総住宅数6,063万戸に対し、空き家数は820万戸、空き家率は13.5%となりました。

近年は何となく上昇が鈍っているように感じますが、本格化するのはこれからで、2033年(平成55年)には総住宅数が約7,100万戸、空き家数は約2,150万戸、空き家率は30.2%に急上昇していくと、野村総合研究所が予測しています。

しかも、空き家は必ず土地を伴いますから、3割が空き家の時代がくれば、家だけではなくその敷地も活用されないことになり、少なくとも住宅用の不動産については、供給過剰になって価値の下落方向に進むでしょう。

空き家には種類がある

総務省統計局では、次のように空き家を定義しており、それぞれの統計をとっています。

二次的住宅
週末や休暇時に利用される別荘やセカンドハウス、その他たまに寝泊まりされる住宅。

賃貸用の住宅
賃貸のために空き家になっている住宅。

売却用の住宅
売却のために空き家になっている住宅。

その他の住宅
その他の理由で空き家になっている住宅。転勤、入院、建て替え、居住者死亡などで長期不在の住宅や区分不能な住宅も含まれる。

二次的住宅は頻度が少ないだけで利用されている、賃貸用の住宅・売却用の住宅については、借主・買主がいないだけの一時的な理由ですが、その他の住宅については、利用の見通しが立っておらず、これが問題とされている空き家です。

では、その数がどのくらいあるか見ていきましょう。


※データ:住宅・土地統計調査(総務省統計局)

統計の方法が変更されたことで、平成15年からのデータしかありませんが、賃貸用の住宅とその他の住宅で増加率が高く、特にその他の住宅で増加が目立ちます。

その他の住宅は、全体に対する比率でも徐々に上昇しており、このまま全体の空き家数が増加していくと仮定するなら、その他の住宅も相当数増えるため、空き家を活用していくための対策が急がれています。

もう1つデータがあり、空き家が修繕を必要としているか(腐朽・破損があるか)についても、統計データが存在しますので紹介しておきましょう。問題のある空き家として、その他の住宅だけを対象としています。


※データ:住宅・土地統計調査(総務省統計局)
※端数処理で種類別空き家数とは一致しない

こちらも統計が始まったのは平成20年からで、データは少ないですが、腐朽・破損ありの空き家が数でも割合でも増えていることを示しています。特に対策が急がれる腐朽・破損ありの空き家は今後も増えていくはずです。

実数では約100万戸と、腐朽・破損のある空き家の割合は空き家全体の1/8程度ですが、100万戸を修繕・解体するとすればその費用は膨大でしょう。

空き家の何が問題とされているのか

空き家は私有財産です。その原則がある限り、自分の財産を自由にする権利を持ち、家に住もうが空き家にしようが関係ありません。

ですから、空き家の所有者にしてみれば、「なぜ空き家が問題なのか意味がわからない」となるのですが、空き家を問題視しているのは、所有者本人ではなくその周辺に住む近隣住民や行政側です。

ここでは、空き家を放置したときに起こり得る問題を考察してみます。

空き家が周辺に与える影響

空き家の存在は、それ自体が悪影響を与える要素は少ないですが、人が住んでいない空き家が適切に管理される例は少なく、大抵は荒れ始めます。

悪影響が出てくるのは主に廃墟状態となってからで、一定以上老朽化が進むと、もはや所有者も居住用途での利用を諦めてさらに放置するでしょう。

空き家で避けられない問題として、次のような悪影響があるとされます。

倒壊の危険

主要構造の老朽化と腐食によって家が傾き、健全な住宅では見られない歪みが確認されるようになると、倒壊の危険があります。

また、斜面に建つ家では、下側の住人に不安が大きく、道路に接する部分は道路側へ倒壊することで、歩行者や自動車等に大きな被害をもたらすかもしれません。

特に懸念されるのは震災時における倒壊で、斜面の下側にある家を直撃したり、老朽化した空き家が真っ先に倒壊して道路を塞いだりしてしまうようでは、被害拡大や避難活動・救助活動に支障をきたします。

家だけではなく、家を取り囲む塀や柵などにも同様の危険があり、歩行者が安全に通行できない事態も考えられます。

建材の飛散

老朽化でモルタル壁が崩落、暴風で屋根材が剥落などして、空き家の近隣では、思いがけなく被害を受けることが考えられます。飛散した建材が通行人に当たると、人命に危険があるほどです。

異常気象で暴風雨があるときや、竜巻による突風被害がニュースで取り上げられるように、屋根材で最も重い瓦ですら、簡単に吹き飛ばされます。スレートやトタンでは、余計に飛散範囲が広がるでしょう。

庭木や雑草の放置

空き家は、庭木や雑草の手入れがされず伸び放題です。生命力の強い雑草は、敷地内に留まらず周辺に拡散しますし、庭木も枝や根が伸びて敷地内から越境します。

庭木の越境(枝と根)は、隣家からクレームが入ること必至で、民法上第233条でも隣家は所有者に切除を求めることが可能です。

また、道路に越境して交通に支障を及ぼすおそれがあるときは、道路法第43条の規定に違反するため、行政から指導を受けるでしょう。

道路には「建築限界」と呼ばれる、一定の高さまでは構造物を配置できない決まりがあります(道路法第30条、道路構造令第12条)。

建築限界は歩道なら2.5m、車道なら4.5mと定められており、庭木が道路にはみ出して、建築限界を違反していると指導の対象になります。

落ち葉や木の実・果実などが他人の敷地に落下するだけでも、トラブルになるくらいなので、庭木や雑草を侮ってはいけません。突発的な大雪によって、木が倒れて周辺に損害を与えた例もあるので注意しましょう。

防犯上の問題

空き家とはいえ、外部からは隔離されているため、施錠がされていても窓ガラスを破るなど、何らかの方法で不法侵入される危険があります。犯罪組織がアジトにしたり、違法な取引がされたりする場に使われる可能性もあります。

また、空き家であることが知られると放火の対象にもなりやすく、防犯上は極めて無防備な状況が続くため、付近の住民は気が気ではないでしょう。火遊びでもされたらたまったものではないですよね。

現に放火されたり、空き家に少年が集まって、喫煙・飲酒・シンナー・ドラッグなどの禁止されている行為に及んだりと、問題視されているケースも出ています。

衛生上の問題

どの地域にもモラルのない人はいるもので、ゴミを不法投棄されるのは、悩んでいる土地の所有者や自治体が多いのではないでしょうか。空き家においても同様に不法投棄の対象になるのは十分に考えられます。

異臭やハエ等の害虫が発生し、とても周りに住んでいられないばかりか、シロアリが発生すると拡散して周辺の建物にもダメージを与えてしまいます。

野良イヌ・野良ネコ程度なら害は鳴き声くらいですが、ネズミまで増えていくと、次第に手が付けられなくなります。地域によっては、スズメバチ、イタチ、ハクビシン、アライグマ、コウモリなどが棲みつき、駆除に追われているようです。

庭木や雑草の放置にも関連しますが、小さな虫が大きな虫を呼び、さらに小動物を呼び込んでしまいがちなので、庭木や雑草の管理は衛生上の問題にも結び付きます。

景観上の問題

老朽化して一部崩壊し廃墟化している空き家、庭は手付かずツタが伸びて家全体に絡みつき、異様な様相を呈している空き家(こちらは趣味の問題もありますが)など、おおよそ景観に問題があるとされる空き家も多いです。

景観を損ねているだけで、必ず実害があるとも言えないのですが、地域によっては景観条例を定めて、意識的に景観整備を行っているため、そのような地域では著しく景観を損ねる空き家も指導対象になってくるでしょう。

景観を損ねても、所詮見た目の問題とタカをくくっていたら大間違いです。2016年3月2日には、和歌山県で景観支障防止条例を根拠にした行政代執行に踏み切られました。

その他

その他の悪影響として、庭木が標識を隠す、電線に触れて停電を起こす、雪下ろしをせずに落雪事故が起きる、設備が脱落して損害を与えるなど考えられます。

空き家に限らず建物の所有者には、工作物の設置または保存の瑕疵で他人に損害を与えたときは、損害賠償責任を負います(民法第717条)。ここでいうところの瑕疵とは、通常備えるべき安全性を欠いている状態を意味します。

そのため、自分では大丈夫だと思っているかどうかに関係なく、実際に他人へ損害を与えてしまい、その損害が予見できていたのに防止策をとっていないときは、損害賠償を請求されるということです。

なお、空き家ではないですが、落雪事故の被害者遺族が、落雪防止措置が不十分だったとして損害賠償を求め、勝訴したケースもあります。

空き家が経済に与える影響

これまでは、空き家とその周辺の関係で説明してきましたが、もう少し視点を広げてみると、空き家が放置されることで経済的にはマイナスです。

空き家に人が住めば何らかの経済活動を伴い、人が住まなくても売却、賃貸、解体のいずれかで経済活動が発生しますから、ただ放置されている塩漬け状態は、経済的な寄与度が最も小さくなります。

また、空き家が解体されなくても新築住宅は建築され続けており、住宅が溢れかえってどんどん市場価値は下落していきます。過疎化が進んでいる地域では、中古住宅の供給が増えて価値の下落が大きいでしょう。

空き家だけ価値が落ちて、居住中なら価値が高いということはあり得ず、地域の不動産市場全体に影響が出てしまいますし、廃墟化した空き家の隣地は敬遠されがちで、局所的には隣地の価値すら下げてしまう可能性もあります。

行政への影響もある

自治体にしてみれば、住宅に誰か住んでもらったほうが、居住者から住民税の収入があり、所有者から固定資産税・都市計画税の収入があります。

空き家でも所有者が判明していれば固定資産税・都市計画税を徴収できますが、所有者が住民票を移さずに引っ越したり、所有者が死亡したりしていると、登記上の所有者に納税通知書を送っても徴収できないケースが考えられます。

また、多くの人は行政に空き家の苦情やトラブルを行政に訴えるので、その対応に追われる=余計な労力を消費することになります。

他には、空き家対策特別法の施行で、一定条件を満たせば周辺に悪影響を及ぼす空き家を強制的に除却(撤去)しやすくなりましたが、所有者不明ではほぼ確実に公費負担となって税金が使われます。

空き家が生まれる原因

空き家が生まれる原因は、大きく分けて個人的な原因と社会的な原因で、それぞれ次のように細分化できるのではないでしょうか。

個人的な原因

  • 自分が住んでいて住み替えや転勤など移住があった
  • 親が高齢化して子の家や近隣に移住した
  • 親が高齢化して福祉施設に移った
  • 親が亡くなって相続があった

社会的な原因

  • 人口減少と高齢化
  • 世帯数増加以上の住宅供給
  • 新築住宅と滅失住宅の差
  • 都市部への人口集中と集合住宅
  • 老人福祉施設や高齢者向け住宅の増加

これらの原因をもう少し掘り下げて確認していきます。

個人的な原因

自分が住んでいて住み替えや転勤など移住があった

現役世代の住み替えや転勤で空き家になっても、それほど深刻な空き家ではないでしょう。なぜなら、現役世代の家は、相続した場合を除くと客観的に市場価値が残っていることも多く、売却や賃貸がしやすいからです。

また、不動産活用の意識も比較的高いので、将来戻ることが予定されていても、リロケーションなどの活用が積極的に行われます。

親が高齢化して子の家や近隣に移住した

空き家の対象は実家ですが、子に説得されて移住を決める親は、一大決心をして住み慣れた家を離れるため、比較的空き家の処分についても柔軟な姿勢を見せることが多いです。

また、主導権はどちらかというと子が握っており、財産として家を子に残したい親の意向があっても、移住を決める過程で話合いはされますから、実家をどうするか子の意見も聞きながら決めるでしょう。

親が高齢化して福祉施設に移った

この原因による空き家は、解決が非常に困難です。その理由は、福祉施設に移った親にとっては、家の処分=帰る場所を失い死ぬまで福祉施設という連想が、どうしても拒絶反応を呼び起こすからです。

現実問題として、家に戻れないかもしれないという思いはあっても、それを認めたくない葛藤が、生きている間は家を処分して欲しくないという言葉になります。

所有者は親なので、子が反対を押し切って処分することなどできるはずもなく、空き家が放置されたままになりがちなケースです。

親が亡くなって相続があった

両親ともに亡くなって実家が相続されるとき、相続人は子が第1優先順位です。子が1人ならトラブルはなくても、子が2人以上いると、実家を処分することに意見が食い違い、とりあえず共有名義にしてしまうのが最悪のパターンです。

共有名義の不動産は、全員の意思の合致がないと処分することができず(持分だけの処分はできても引き受ける人が少ない)、争いを避けて選んだ解決策が仇となり、いつまでも処分が進みません。

不動産は所有権を登記できるようになっており、複数人が所有者となるとなる共有名義も許されています。共有名義における名義人それぞれを共有者と呼ぶのですが、共有者の関係が良好であれば、共有名義はそれほど問...

社会的な原因

人口減少と高齢化

人口減少も高齢化社会も、既に認知されている社会現象なので、今さら説明するまでもないでしょう。人口の絶対数が減ると、それだけ住宅需要は減り、高齢化すると近い将来に空き家が増加する原因となります。

世帯数増加以上の住宅供給

意外に思うかもしれませんが、人口減少が始まってからも核家族化・晩婚化等の影響を受け、世帯数は増えています。世帯数のピークは2015年~2020年程度と推計されており、以降は減少し続けます。

国土交通省の調査によると、平成10年と平成25年を比べたとき、世帯数は800万増えています。ところが、住宅総数は1,000万増えていますから、単純計算でも15年で200万戸の住宅が過剰に供給され、それは即ち空き家を生み出していることに他なりません。

新築住宅と滅失住宅の差

建てられる数と壊される数では、建てられるほうが多いから空き家が増えるという単純な論理です。国土交通省の調査で新築戸数と滅失戸数を比べてみると、平成25年では新築98万7千戸、滅失12万7千戸と、圧倒的に新築戸数のほうが多いです。

平成25年の時点で、820万戸とされる空き家は増加の一途をたどり、将来は住宅の3割で空き家になるという試算すら出ています。 以前から空き家問題は指摘されていましたが、人口や世帯数、年間の滅失戸...

都市部への人口集中と集合住宅

都市部に人口が集まるのは今に始まったことではないですが、都市部に人が集まると、住宅用地が不足して集合住宅がその需要に応えます。

不動産投資は一般に都市部のほうが効果は高く、都市部にアパート・マンションが乱立していくことで、地方では人口減少による空き家の増加、都市部では住宅の過剰供給による空き家の増加という図式です。

老人福祉施設や高齢者向け住宅の増加

少子高齢化は、ビジネス構造にも影響を与え、介護ビジネスという言葉を良く聞くようになったのも比較的最近の話です。右肩上がりの成長分野で、参入する事業者は後を断ちません。

家族構成が三世代から二世代へ変化したことで、子が親の面倒を見られず老人福祉施設は利用料が高くても入居待ちの状態、スタッフは低賃金と、いずれも社会問題になっています。

これほど潤沢に顧客が存在し、将来も見込める業界は珍しいのですが、同時に家を空ける高齢者が増えるため、空き家が増える原因となります。

空き家が減らない原因

空き家が生まれてしまうのは、所有者の移住や死亡、人口の流動など避けられない側面もあって、そのこと自体は仕方がないでしょう。

しかし、空き家になってから居住、売却、賃貸、解体のいずれもされず、ただ放置される空き家が増える背景には、別の事情があると考えるべきです。

1つはっきりしているのは、空き家への想い(特に実家)があって、処分に踏み切れない事情ですが、恒久的に空き家を維持できるものではなく、原因が心情面だけなら、いつかは決断の時が来るでしょう。

他の原因として考えられるのは次のようなものです。

所有者が空き家だと認識していない

典型例は親が亡くなった実家ですが、仏壇や遺品は実家にあり、盆正月も含めて年に数回から月に1回親族が訪れる程度だとします。

所有者視線では、年に数回でも利用しているので空き家という意識は薄く、周辺住民視線では間違いなく空き家でしょう。

留守宅と空き家で決定的に違うのは、家が居住で使われているかどうかです。何ヶ月家を空けようと、そこに住んでいて家を空けているなら留守宅、誰も住んでいなければ、たった1日でも空き家です。

所有者が空き家の意識を持っていないと、適切な管理が行われず訪れる回数も年々減って、徐々に問題のある空き家へと変わっていきます。

空き家が放置されて困るのは主に周辺住民で、周辺に迷惑をかけると、損害賠償請求される可能性を認識している所有者は少ないです。

所有者不明の空き家もある

不動産の所有者は、法務局で管理されている登記記録(登記簿謄本・登記事項証明書)で確認可能です。市町村が整備している固定資産課税台帳でも確認できます。

売買・贈与・相続で所有者が変更されると、新たな所有者は法務局で所有権移転登記(いわゆる名義変更)をしますが、登記は義務ではないので、人によっては行わないこともあり、その時点で登記上の所有者と真の所有者が異なっていまいます。

一般に、売買では必ず所有権移転登記が行われます。そうしないと、真の所有者ですら第三者に所有権を主張できないからです。

また、所有者が変わらなくても住所が変更されたとき、住所変更登記によって登記記録に反映させる必要もあるのですが、住所変更登記もそれほど行われません。さらに住民異動届も出さなければ、住所の変更を把握できないでしょう。

このように、所有者が変わっている又は住所が変わっていることで、所有者の消息が掴めない空き家は、周辺住民も役所も所有者に空き家の管理を指摘することができず、放置されて荒廃していきます。

空き家の管理に疲れてしまう

遠隔地であればあるほど空き家の管理は手間が大きく、気密性が高く庭もないマンションを除くと、1ヶ月に1回程度は訪れる必要があると言われています。

しかし、隣が空き家なら簡単でも、遠隔地になると行くだけでも大変、換気・掃除等の作業に加え、草刈り・除雪など体力的にきつい作業が伴うと、徐々に訪れる頻度が少なくなって、そのうち放置されます。

また、空き家を管理していた人が、年齢や諸事情で難しくなっても、代わりに管理してくれる人がおらず放置されることもあるでしょう。

つまり、放置される空き家の中には、最初から放置されていたのではなく、何かのタイミングで放置が始まるケースもあるということです。

現在は、空き家管理サービス業者も増えてきたので、管理が面倒になった・できなくなったタイミングで、管理業者への依頼を考えてみるべきです。

固定資産税・都市計画税の増加

住宅が建っている敷地で一定の面積を住宅用地と呼び、住宅用地には固定資産税・都市計画税を軽減する課税標準の特例(住宅用地特例)という措置があります。

住宅用地特例があると、所有者は土地の税金が安く済むので、老朽化した空き家でも解体されない原因になっていると従来から批判されていました。

そこで、空き家対策特別措置法では、周辺に悪影響を与える空き家(特定空き家)に認定され、行政指導によっても改善しない空き家の敷地に対しては、住宅用地特例の適用を除外する規定が盛り込まれました。

住宅用地特例が適用除外になると、概ね土地の税金が3倍から4倍程度に上昇します。詳しくは別記事を参考にしてください。

空き家対策特別措置法が全面施行され、自治体の空き家対策が強化されたことで、空き家の所有者にとって見過ごせない事態が起こっています。 それは、市町村(東京23区を含む。以下同じ)から悪影響を与え...

解体・リフォーム費用が高すぎる

空き家といっても大小様々ですが、特に田舎の実家ほど家が大きい傾向になるので、家の解体費用はかなりの高額です。

一応の目安としては、木造なら3万円/坪、鉄骨造で4万円/坪、鉄筋コンクリート造で5万円/坪で、建坪30坪・延床面積50坪の2階建てなら、単純計算では木造でも150万円かかってしまい、簡単に出せる金額ではありません。

※解体費用については別記事を用意します。

リフォーム費用についても同じことで、設備を新調するとあっという間に数百万円ですから、リフォームして活用するならまだしも、使い道のない空き家にお金をかけることができる人は少ないはずです。

空き家問題が深刻になりつつあり、自治体は問題がある空き家の解体・改修に補助金を用意しています。全ての自治体で実施されているわけではないので、補助金の対象や金額については、自治体に問い合わせてみましょう。

権利関係の調整がつかない

不動産は共有名義が可能であり、共有名義になっている空き家(または敷地)を活用しようと思っても、共有者の同意が得られず実現しないことも多いです。

親の代や祖父母の代から共有名義になっていることもありますが、最も多いのは法定相続に伴う共有名義状態で、実家を相続した兄弟姉妹が争い、いつまでも空き家をどうするか決められないまま放置されます。

特に、相続財産が実家しかない場合では、相続人全員の共有名義にする、誰かが所有者となって他の相続人に対価を支払う、売却して代金を分割する方法のいずれかを選択しなければならず、いずれも誰かが反対すると実現できません。

家財・家具の処分ができない

すぐに使うものではないので倉庫代わりにしている、遺品や仏壇があって心情的に処分できないといった悩みが、空き家活用を鈍らせます。

空き家が老朽化してくると、やがては何らかの行動に出るしかないのですから、処分したくない感情だけで空き家は維持できません。

親戚などに引き取ってもらえるものは減らし、価値があればオークションなどを利用、残りは遺品整理業者に委託して、空き家の活用を考えるべきです。空き家の活用を目的とした家財の処分には、補助金を出している自治体もあります。

仏壇の処分は、本サイトの趣旨と外れるので取り上げませんが、宗教的な側面で処分方法にも特徴があり、菩提寺や専門業者等に相談してみましょう。

既存不適格で解体ができない

既存不適格とは、建築当時に適法でも、現行の法制度には適合していない物件のことです。例えば、建ぺい率・容積率や高さ制限、敷地の接道義務といった、現在の基準に不適合な状態をいいます。

既存不適格では、建物を解体してしまうと、同程度の建物を再建築できなくなることから、再建築不可とも呼ばれます。しかし、建物に関する基準が不適合なときは、制限付きとはいえ適合する建物にすることでクリアできます。

問題は敷地の制限で、特に重要なのが、原則として4m以上の道路に2m以上接しなければならない接道義務です。古い空き家が建築された時代には、接道義務が厳格ではなく、現行の接道義務を満たさない細い路地にも住宅が建てられています。

このような空き家は、解体すると住宅が建てられない土地になり、市場価値が非常に低いため、家が古くても解体できず、売却活動も難航して放置されます。

似たような問題は、市街化調整区域の空き家でも発生します。市街化調整区域は建築が制限されており、解体すると再建築の許可が下りない可能性があります(全てではありません)。

売るに売れない貸すに貸せない

築浅で良い状態の家なら、大抵は売るにも貸すにもそれほど困りません。普通に考えて、マイホームを売る前提や貸す前提で建てる・買う人はいないので、築深の空き家は傷みも激しく、価値が低い状態で存在します。

価値が低い家は、買主が手をかけなくてはならないので売れず、賃貸ならリフォームを必要としますが、リフォームをしてまで貸し出すと、家賃の高い都市部以外は、リフォーム費用すら回収が難しいです。

最初は売却・賃貸するつもりでも、全く問い合わせがなく諦めてしまい放置されていきます。家の価値がない古家付き物件として売るか、解体して更地にして売る、タダでも手放したいなら寄附を考えるなど、諦めないで続けることです。

実家のある人は全員が空き家問題の対象者

核家族化が進み、一生を親と同居して暮らす子は少なくなりました。子は経済的な自立または婚姻すると、家を出て親と別世帯になるのが一般的なスタイルです。

この時点で、もう実家の空き家問題が不可避だとわかるでしょう。実家を出て世帯が分かれると、いつか実家は空き家になり子が相続します。

親が平均的な寿命で亡くなる頃には、子の生活も固まっており、容易に実家へ移り住むことはできず、空き家になった実家は宙に浮いてしまいます。

親が生きているうちに話し合うべき

親が亡くなる前に、亡くなった後の話を切りだすのは不謹慎とされ、親は親で生前から争いのタネを産みそうな話題は避けたいでしょう。

その結果、相続が起きてから相続人で話し合うのですが、何度か説明しているように、仲の良い兄弟姉妹でも考え方の違いで衝突しやすいです。

また、子が相続を考える年齢になると、親は病気や認知症で意思を表明しづらい状況も増えて、親が年齢を重ねるほど生前に話し合う機会は減ります。

亡くなる前提の話をするのはためらいますが、親も子も空き家に対する意識を持ち、どうしていくのが良いのか元気なうちに話し合っておくべきです。

話し合うタイミングは必ずある

不幸な事故や急病で親が亡くなるケースを除くと、人生の終末期を迎える親は、最期の瞬間までどのように過ごしていきたいか希望を持っています。

いわゆる「終活」とまでいかなくても、介護が必要になったとき、大病を患ったときなど、必ず最期を考え始めるタイミングが訪れます。

親の財産で子が争うのを望む親はいませんから、そのような親の気持ちも汲み取り、実家をどうするべきか親子で決めるのが最良ではないでしょうか。

空き家問題への対策

空き家問題は、NPOなど非営利な団体を除く民間レベルでは、大きなビジネスチャンスです。そのため、不動産売買・賃貸業界、リフォーム業界はもちろん、不動産管理業界、セキュリティ業界等も盛んに事業展開しています。

一方、行政レベルでは、空き家の放置が住環境の悪化に繋がることから、対策として予算を計上し、積極的な改善を推進している状況です。

したがって、本来の意味で対策と呼べるのは行政サイドの視点なのですが、ここでは民間の事例も交えて紹介していきます。

空き家対策特別措置法

空き家問題が話題になったのは最近ですが、従来から問題視されていた空き家は、関連法規や条例を根拠に対処されていた経緯があります。

しかし、空き家問題が注目され始めたきっかけは、空き家対策特別措置法(正式名称: 空家等対策の推進に関する特別措置法)が施行されたことでした。

周辺に著しい悪影響を与えるおそれのある空き家は、特定空き家(法律上は特定空家等)とみなされて行政指導の対象になります。

行政指導にも応じないと、やがて固定資産税・都市計画税が上昇して、それでも放置していると行政が強制的に対処する「行政代執行」です。具体的には、必要な修繕・解体を行政から業者に委託するのですが、その費用は空き家の所有者負担です。

空き家対策特別措置法については以下で解説しています。

空き家問題が深刻化していることを踏まえ、政府は空き家対策特別措置法(正式名称:空家等対策の推進に関する特別措置法)によって法整備を進め、市町村(東京23区を含む。以下同じ)の空き家対策を進める後ろ盾...

空き家バンク

主に自治体や自治体から委託されたNPO法人等が、空き家バンク・空き家情報バンクなどの名称で、空き家のマッチングを行っています。

空き家の所有者と、空き家にニーズを持つ希望者を結び付けることは、これからの空き家活用を考えていく上で重要ですが、残念ながら運営主体の多くは自治体であるため、まともに機能している空き家バンクは僅かです。

とはいえ、営利を目的にした民間企業が運営するには、成立する取引価格が総じて小さく(空き家の価値は低く)、得られる仲介手数料も少額で魅力がありません。

また、空き家活用を通じた地域の活性化や移住者の受け入れが目的の自治体と、単に営利しか目的にしない民間企業では、目指すところが全く異なりますので、どうしても民間企業には馴染まないのでしょう。

よって、自治体や非営利団体であるNPOが運営するか、民間企業が運営するとしても財政的な補助がないと難しい現状です。

※空き家バンクについては別記事を用意します。

空き家への補助金

国と自治体で一部を補助する空き家再生等推進事業、または自治体が空き家対策を目的とした補助事業を行っています。

その内容は自治体により様々ですが、以下のような補助金が多いです。

  • 改修工事費用の補助金(空き家活用が目的または空き家バンク登録)
  • 解体工事費用の補助金(主に危険の多い空き家)
  • 家財処分や清掃費用の補助金

また、空き家への補助金は、空き家バンクと結びついているケースが多いので、空き家バンクと並行して利用を検討してみましょう。

※空き家の補助金については別記事を用意します。

空き家の寄付受け入れ

実施している自治体は少ないですが、所有者が空き家をどうしても活用できない事情があれば、敷地も含めて自治体が寄付を受け入れる制度もあります。

ただし、自治体が受け入れた後は、公費で解体や整備などを行うのですから、何の有効活用も見込めない空き家まで受け入れるわけにはいきません。

また、本来は固定資産税・都市計画税の対象になる空き家と敷地が、寄付後は公費管理となることで、自治体にとっては収入から支出に変わってしまいます。

多くの自治体が問題のある空き家でも寄付を受け付けず、空き家バンクへの登録を促したり、解体費用を補助したりするのはそのためです。寄付を受け付けているかどうかは役所に確認すると教えてくれるはずです。

※空き家も含め不動産の寄付については別記事を用意します。

空き家管理サービス

民間レベルでは、空き家の管理に困っている人を対象に、定期的な巡回サービスが提供されています。遠隔地にある空き家では、交通費だけでも負担が大きく、空き家管理サービスの利用者は増えています。

空き家管理サービスの料金は提供業者しだいですが、月1回の巡回で数千円~1万円程度が多いようです。サービス内容も各社異なるため、必要なサービスと費用対効果を比べて検討してみる価値はありそうです。

もっとも、空き家を管理するだけでは問題を先送りしているに過ぎず、最終的な空き家の活用を考えるべきで、長期間空き家管理サービスを利用しても、結局解体になるのなら、費用が無駄になるので早いうちに決断が必要です。

※空き家管理サービスについては別記事を用意します。

まとめ

空き家問題の多くは、空き家に管理が必要という意識の欠如ですが、管理したくてもそんな余裕はないのが正直なところではないでしょうか。実家になると想い入れもあって、なかなか難しいのが現実です。

しかし、もはや空き家を放置することが許されない時代に差しかかっており、近所迷惑になってしまう空き家については、対処するのが所有者の責任です。

行政指導ならまだしも、周辺住民に損害を与えて賠償責任を問われることのないように、現状の把握と必要な対処を考えてみましょう。

  • 0
  • 0
  • 0
  • 0
  • 0

カテゴリー内の他の記事

空き家活用と移住体験住宅~広がる自治体の移住支援

日本は人口減少時代に入り、世帯数も近い将来には減る推計ですから、必然的に住宅が過剰供給になって空き家は増えます。 現に、平成25年には約820万戸ある空き家のうち、活用される予定のない空き家が約318...

空き家問題の一考察~空き家の増加と新築住宅の増加を考える

平成25年の時点で、820万戸とされる空き家は増加の一途をたどり、将来は住宅の3割で空き家になるという試算すら出ています。 以前から空き家問題は指摘されていましたが、人口や世帯数、年間の滅失戸数を踏ま...