空き家問題の一考察~空き家の増加と新築住宅の増加を考える

平成25年の時点で、820万戸とされる空き家は増加の一途をたどり、将来は住宅の3割で空き家になるという試算すら出ています。

以前から空き家問題は指摘されていましたが、人口や世帯数、年間の滅失戸数を踏まえれば、日本の住宅は誰がどう考えても新築しすぎで、新築の数だけ除却(解体)していかないと、いつまでたっても空き家は増え続けます。

にもかかわらず、滅失戸数を圧倒的に上回る住宅が新築され続けています。数の比較という、小学生でもわかりそうな理屈がいつまでも改善されず、空き家は問題だと声高に叫ばれていることを不思議に感じないでしょうか?

新築住宅の抑制は一筋縄ではいかないと言われており、空き家問題の一端を成す新築住宅の増加について考えてみます。

新築戸数は滅失戸数よりも多い

数字で比べるのが一番わかりやすいので、新築戸数と滅失戸数の推移を用意しました。


※データ:新設住宅着工戸数の推移・住宅の滅失戸数の推移(いずれも国土交通省)
※滅失戸数には災害による滅失を含む

データは少し古いですが、新築戸数は景気を反映しており、過去には消費税の増税の反動やリーマンショックで大きく減っています。

しかし、どの年でも新築戸数は滅失戸数より常に多く、毎年数十万戸~百万戸以上の住宅が過剰に供給され続けてきたことになります。

もちろん、一棟で多くの戸数を生み出す大型マンションの新築もあるため、棟数としては目立たなくても、戸数ベースではご覧のとおりです。

毎年この状況が繰り返されてきたのですから、いくら世帯数が増えても住宅が余って、空き家が増えるのも無理はないでしょう。要するに建て過ぎですよね。

多くの住宅は寿命前に壊される

一般に木造住宅は30年程度で寿命とされますが、それは単純に耐用年数・耐震基準の問題や、古くなった家を新しくしたい需要があるだけの話です。

昭和の時代に建築された家がいくらでもあるように、日本の住宅は、主要構造の老朽化で住めなくなる時点を寿命にすると、30年よりも確実に長いでしょう。

ところが、日本人は住宅を修繕しながら使っていく意識が薄く、お金をかけて直すくらいなら、もう少し頑張って建て替えてしまおうと考えます。

住宅以外でも例えば家電などで、修理に出すなら修理代金に少し上乗せして新製品を…と思った経験ないでしょうか?自動車も壊れるまで乗る人は少数派です。

結果として30年程度で家は壊され、それが寿命とされてしまうのですが、本来はもっと長持ちするだけの耐久力を持ち合わせています。

新築住宅は経済的な影響が大きい

建設業界は下請けで成立しており、新築を受注したハウスメーカーや工務店は、多数の専門業者を下請けに使い、下請けが孫請けを使うピラミッド構造です。

一流企業のハウスメーカーに注文住宅を頼んだからといって、ハウスメーカーの社員が家を建てることはありません(施工管理・監理はするでしょうが)。家を建てるのは下請けになる現場の職人たちです。

戸建住宅が1軒建つと、建材や設備のような物としての消費、設計する人・施工する人・監督する人など労力の消費、住宅ローンの借り入れなどによって、平均的には数千万円のお金が動きます。

一度に起こる個人消費としては人生最大級で、新築住宅のもたらす経済的影響は大きく、住宅ローン減税などで支援する枠組みも用意されていることから、方向付けとしては従来から新築を推進しています。

住宅供給は政策として進められてきた

戦後においては住宅がひどく不足して、政策的に住宅の大量供給を進めてきました。総住宅数が総世帯数に追い付いたのは昭和40年代、全都道府県で住宅数が世帯数を上回ったのは昭和50年代と、わずか40年ほど前のことです。

その後、量から質へと方向転換を見せ、さらにライフスタイルの多様化で、長期優良住宅やバリアフリーを普及させようとしているのは知ってのとおりです。

住宅の質が向上して良質なストック住宅が増え、中古住宅市場が形成されていれば良かったのですが、住宅が潤沢になりつつあったときに訪れたバブル景気とその崩壊が、住宅建築をさらに加速させました。

空前の好景気から一転、景気の急激な失速で対策が必要になり、新築住宅は景気対策として使われ、恒常的な過剰供給の時代へ突入していきます。

住宅の質は向上したがストック重視ではない

住宅の質を向上させると、普通は住宅のライフサイクルが伸びて、中古市場の拡大と共に新築住宅の需要は落ち込むはずです。新築住宅の需要が落ち込めば、景気対策としての効果は小さくなるのが道理でしょう。

しかし、政策として行われたのは住宅ローン減税の拡充で、むしろ新築住宅購入を促進させたのですから、新築住宅の需要を落ち込ませない意図があり、ストック重視と呼べる政策ではありませんでした。

経済効果で中古住宅に勝る新築住宅を優遇して、古くなったら建て替えるスクラップアンドビルドの考えです。いや、スクラップ(滅失戸数)は少ないので、ビルドアンドビルドと言うべきでしょうか。

とにかく、建前上はストック重視だとしても、新築住宅は止まらなかったどころか、止めないように誘導してきたというのが、これまでの住宅政策です。

新築住宅の優遇政策は転換できるのか

ストック重視の住宅政策を行うとすれば、住宅を長く使っていく流れを作るためにも、新築住宅優遇から中古住宅優遇の制度へシフトする必要があります。

中古住宅市場が拡大して喜ぶのはリフォーム業界、困るのは建設業界でしょう。しかも、新築住宅のほうが経済効果は高いので、中古住宅市場を充実させるほど、景気対策に別の手法を考えなくてはなりません。

建設業界にとって新築住宅は好都合

建設業界にとっては、新築住宅が優遇されて、新築需要が増すほど実入りが大きく歓迎なのは確かです。そして、建設業界を困らせて反発されると、政治献金に影響するのが政権与党たる自民党です。

建設業界は、官僚の天下り先にもなっており、地方でも建設業界と議員・行政職員との癒着は、少しも珍しいことではないのですが、それを取り上げるのはテーマから外れるのでやめておきます。

問題は、新築住宅優遇から中古住宅優遇への政策転換、もっと言うなら新築住宅を抑制する政策が、現実的に可能かどうかという点です。

新築住宅を抑制しなければ空き家は減らない

新築戸数が滅失戸数と同じになると、数字上の空き家数は維持されますが、そのためには膨大な空き家を除却(解体)していかなくてはなりません。

この方向性は、ストック重視と相反しますし、空き家対策特別措置法の施行で、危険のある空き家は行政の積極的な介入が可能になったとはいえ、個人財産を公権力で排除していくのは公益性の建前が必要で限界もあります。

他に考えられるのは、1世帯が複数の家を所有する方向性です。しかし、そこまで余裕のある家庭はごく一部で、こちらも難しそうです。非正規雇用が拡大して低所得者が増えているのに、複数の家を所有することなど夢のまた夢だからです。

固定資産税を減免すれば、セカンドハウスを所有する人が増えて空き家は減るという論調を見かけますが、固定資産税に歳入の多くを依存する地方財政にとって、固定資産税の減免は影響が大きすぎるでしょう。

であるなら、空き家の増加を防ぐために新築住宅の抑制となるのですが、建設業界の突き上げが必至で、英断を下すことはできないと思われます。

住生活基本計画の見直し

住生活基本計画という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

住生活基本法に基づく住生活基本計画は、国土交通省の社会資本整備審議会(住宅宅地分科会)が、今後10年間の住宅政策を提言し、閣議決定されるものです。

住生活基本計画は5年ごとに見直しが行われ、平成28年にも見直しが行われました。平成28年の見直しでは、空き家対策についても成果指標(数値目標)が設けられているので、現在の住宅政策を知るために重要です。

空き家関連の成果指標

 実績値目標値
賃貸・売却用等以外の空き家数318万戸(平成25年)400万戸程度(平成37年)
既存住宅流通の市場規模4兆円(平成25年)8兆円(平成37年)
リフォームの市場規模7兆円(平成25年)12兆円(平成37年)

成果指標は多岐に渡りますが、空き家関連を抜き出すと、空き家数の目標、中古住宅市場・リフォーム市場の拡大です。しかしながら、新築住宅を抑制しようとする考えそのものが住生活基本計画には存在しません。

平成37年までの目標は、空き家を減らすのではなく空き家の増加を抑える内容です。

まとめ

空き家問題の原因は、新築住宅が止まらないことだけではなく、所有者の空き家に対する心情的な問題、税制上の優遇措置なども絡んで複雑です。

ただし、絶対的な課題として、過剰になっても住宅を増やし続けてきた現状は、どこかで逆転させなければ空き家は適正量になり得ません。

中古住宅市場・リフォーム市場を拡大することで、相対的に新築住宅の減少に繋がるのでしょうが、新築住宅の抑制が必要なことは周知の事実であるのに、見えざる力が働いて明言を避けていると勘ぐるのは「ゲス」なのでしょうか。

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