特定空き家の認定基準を知って適切な空き家管理をしよう

空き家の所有者にとって一番の悩みは管理です。適切な管理が行われていない空き家は、老朽化が進んで物件としての価値を下げるだけではなく、周辺住民にとっても害悪になる可能性すらあります。

国は、空き家問題に対処するため空き家対策特別措置法を制定して、市区町村が行う空き家対策には強力な法的根拠が担保されました。今や、空き家を管理せずに放置していると、役所が介入してくる時代になったということです。

空き家問題が深刻化していることを踏まえ、政府は空き家対策特別措置法(正式名称:空家等対策の推進に関する特別措置法)によって法整備を進め、市町村(東京23区を含む。以下同じ)の空き家対策を進める後ろ盾...

空き家対策特別措置法の施行で、管理不全の空き家は土地の固定資産税・都市計画税が増税されたり、最悪のケースでは強制的に解体されたりする事態に発展します。

そのキーワードになるのが特定空き家(法律上は特定空家等)。

特定空き家に認定されるかどうかで行政上の扱いが全く変わってくるため、その認定基準に沿ったチェックをして、特定空き家にならないよう管理しましょう!

というのがこの記事の趣旨です。

空き家の何が悪いとされるのか

空き家は所有者の財産ですから、所有者がどのように使おうと使うまいと、それは個人の自由であることに異論の余地はありません。

にもかかわらず、なぜ役所が私有財産に介入してくるかというと、空き家がもたらす公益への影響を考えているからです。

一度は目にしているかもしれませんが、もはや廃墟となった空き家は、敷地に雑草が生え放題、立木は敷地を越えて周辺に葉や果実を落とし、いつの間にか鳥獣も集まります。

また、シロアリがつくと一気に朽ちていき、傾いたり外壁・屋根ふき材の崩落が始まって、ついには空き家が倒壊してしまいます。

他にも、景観の悪化、ゴミの不法投棄、不審火、関係者以外の不法侵入など、さまざまな可能性まで考えると、明らかに公益性を損なっていますよね。

ある程度定期的に使用されている、または適切に管理されている空き家であれば、そのような状態にはならないため、空き家が廃墟化する前に、特定空き家と認定して対処していくのが、空き家対策特別措置法施行以降の空き家対策です。

特定空き家とみなされる4つの状態と認定の指針

法律上、特定空き家は次の4つの状態だと定義されています(空き家対策特別措置法第2条第2項)。

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

これらの定義は抽象的で、その基準については国土交通省がガイドラインを設けていますが、ガイドラインにおいても「必ずしも定量的な基準により一律に判断することはなじまない」となっており、ガイドラインでは例示しているに過ぎません。

特定空き家の認定は周辺への影響度が考慮される

国土交通省のガイドラインが一律の判断を求めていない理由は、特定空き家として措置を講じる必要性が、周辺状況や地域によって変わるからです。

この記事では、全国24市町で公表されている認定基準を参考としましたが、同じチェック項目でも自治体によって判定が異なることに注意してください。絶対的な特定空き家の認定基準はありません。

例えば、同程度の倒壊リスクがある空き家だとして、住宅密集地にある場合と、広い私有地の奥にポツンと建っている場合を考えてみます。

前者は、倒壊すれば間違いなく周辺に被害をもたらし、さらに接する道路が通学路や避難経路なら、より一層の被害拡大が予見されますよね。

どちらの悪影響が大きいかと言えば、一目瞭然で前者のほうが大きく、何らかの措置を講じる必要性が高い=特定空き家に認定されやすいとなるわけです。

また、台風や大雪、海沿いにありがちな塩害、傾斜地の住宅地では擁壁の問題、場所を問わず地盤の脆弱性など、建築物は諸条件によって求められる耐久性が異なり、損傷による危険度も必然的に変わってくるでしょう。

ですから、各市区町村がガイドラインに沿う形で独自の認定基準を策定しており、特定空き家の認定は、ガイドラインの言葉を借りれば「悪影響の程度と危険等の切迫性」も考慮して判断されるのです。

以下で説明しているチェック項目は、木造住宅を対象にしています。

1.著しく保安上危険となるおそれのある状態のチェック

1-1.建築物が著しく保安上危険となるおそれがある

既に一部が倒壊している(例えば1階部分がつぶれてしまっている)、建物全体が著しく傾斜して倒壊寸前など、誰が見ても危険だと認識できる状況であれば、危険度を最高ランクとして詳細調査を省く場合があります。

これは、調べるまでもなく危険が迫っているレベルであることに加え、調査する人の安全を確保しなくてはならないからです。

とはいえ、特定空き家の認定は、前述のとおり周辺に与える悪影響が関係してくるため、可能な範囲で周辺状況も含めた調査がされます。

1-1-1.建築物が倒壊等するおそれがある

【基礎の不同沈下】
軟弱地盤や地震による液状化で起こりやすく、基礎に不同沈下があると、柱の傾斜や屋根が波打つなど建物全体の変形に至ることが多く、危険度が高いと判定されます。

また、比較的目視でチェックしやすい項目であるため、不同沈下による変形・崩壊が一部なのか、全体に及んでいるのかといった確認もされます。

【基礎の破損】
大きな亀裂が入っている、剥落・欠損している、鉄筋が露出しているなどです。コンクリートの性質上、クラック(ひび割れ)はある程度避けられませんが、全体的に入っている場合や、幅が広いほど、深いほど、長いほど重度と判定されます。

目安としては、幅0.3mm未満、深さ20cm未満、長さ20cm未満であれば、軽微なクラックと判定している自治体が多いです。

また、見た目は軽微なクラックでも鉄筋の錆汁を伴うものは、雨水等が侵入して錆を進行させるため、より危険だと判定されます。

【基礎と土台のずれ】
基礎と土台は金物で緊結されているため、施工不良でもない限り大きくずれません。基礎と土台のずれは、建物の重さを受け止める軸がずれていることになり危険です。

ただし、大きなずれに明確な基準を設けている自治体は確認できませんでした。

【土台の腐朽等】
土台の腐朽・破損・蟻害(シロアリ侵食)の程度です。大きな断面欠損が生じているか、目視でも明白なほどボロボロに腐食していると深刻な状況です。

土台の腐朽等については、ほとんどの自治体で主観的な判定ですが、概ね30%以上の土台材に腐朽等があることを重大としている自治体がありました。

また、緊結金物の著しい腐食や脱落もチェックされます。

【建物・柱の傾斜】
建物・柱の傾きは倒壊リスクそのもので、傾きを調べるには下げ振りを用いるのがベストでしょう。下げ振りは紐にオモリをぶら下げて垂直度合いを計測するシンプル道具で、大まかな計測ならわざわざ買う必要もありません。

紐を上部に固定してオモリをぶら下げ、オモリが外壁や柱から離れた距離を測ります。

傾斜=外壁や柱からオモリまでの水平距離÷紐の長さ

目安としては、1/60未満の傾斜だと軽度、1/60~1/20の傾斜では中度、1/20以上の傾斜を重度と判定している自治体が多いです。計算しやすくするため紐の長さを1200mmとすると、外壁や柱からオモリまでの水平距離は、

1/60未満→20mm未満、1/60~1/20→20mm~60mm、1/20以上→60mm以上です。

【柱・はり・筋かい】
柱・はり・筋かいは、構造耐力上の主要な骨組みです。したがって、損傷が激しいと致命的な耐久力の低下を招いており、危険な空き家と判定されかねません。

亀裂、ひび割れ、破損、腐食・蟻害による断面欠損の有無をチェックしますが、これらが確認できなくてもゆがんでいないか、柱とはりの接合部がずれていないかも重要です。

目安としては、概ね30%(表面積ではなく本数)の柱・はり・筋かいに損傷が見られると、危険度が高い判定をしている自治体がありました。

1-1-2.屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがある

【屋根】
屋根のゆがみ、損傷(下地の露出・穴が開いている)、瓦など屋根ふき材の剥がれ・ずれといった状態は危険だと判定されます。

注意点として、屋根は下からの目視で確認できる範囲が限られていますが、屋根に上ったり梯子をかけたりすると、危険かつ損傷してしまう可能性があるのでやめましょう。

なお、屋根ふき材の剥がれ・ずれについては、2階屋根で直下に1階屋根があれば、地面への落下危険度が減るとして、判定を軽くしている自治体がありました。

【庇・軒】
裏板(軒天)に腐朽が見られる、あるいは裏板が剥落している、露出した垂木が腐朽しているといった、目視でも確認しやすい部分です。

また、庇・軒がゆがんでいる場合や(特に軒がゆがんでいると屋根全体もゆがんでいる可能性大)、垂れ下がって落下の危険性があるときは重い判定がされます。

【雨樋】
雨樋は必ずしも付いているとは限りませんが、雨樋を付けている場合は必ず留め具がありますので、留め具の腐食・脱落によって雨樋が垂れ下がっていないかチェックします。

【外壁】
外壁にはモルタル等の塗り壁(湿式)とサイディング仕上げ(乾式)があります。

塗り壁の場合、ある程度のひび割れが避けられないとはいえ、下地に達しているほどの深い亀裂、剥落による下地の露出をチェックします。

サイディングの場合、目地が大きくずれていないか、破損が見られないか、固定している釘等が浮いていないかをチェックします。

これらの度合いによって危険度を判定することになりますが、外装材の種類を問わず、壁を貫通している穴が生じていると重い判定がされます。

なお、重大な損傷とする目安については、自治体によって25%~65%とバラつきが見られました。外装材の落下・飛散の危険性を考えれば、道路に面している外壁は損傷の有無が重要視されるでしょう。

【窓・玄関】
誰でも危険だと感じるのは、ガラスがひび割れている、既に割れて一部が落下している状態です。ガラスが無くて開口していると、継続的な風雨による内部損傷を予見できます。

また、サッシ等の枠部分に変形が見られるか、ゆるみが無いかもチェックされますが、変形・ゆるみとガラスの割れが同時に生じていると、より危険だと判定されることは言うまでもありません。

【バルコニー・屋外階段】
バルコニー・屋外階段のいずれも、物が大きいだけに脱落・転倒すると非常に危険な設備です。そのため、錆による腐食、破損・傾斜などの確認、とりわけ支持部分に劣化がないか要チェックです。

【室外機・アンテナ等】
地上に設置されていないエアコンの室外機、テレビ等のアンテナ、貯水タンク、給湯設備など、建物に固定されている設備は、脱落の危険性が重要です。

目視では問題なくても、支持部分に腐食やがたつきがあれば危険性があると判定されます。

【門・塀】
門・塀は道路に面しており、過去には塀が崩れて死亡事故を起こしているので、近づくことが危険でなければ綿密に調べたいところです。

ブロック塀で高さが2.2mを超えるものや、高さが1.2m以上で控え壁(転倒防止用に塀と直角方向に突出した補助壁)が無いものは、現行法令に準拠していませんが、それだけで直ちに危険だと判定されるのではありません。

基本的には、ひび割れ・破損・傾斜・ぐらつきの有無による倒壊・転倒の可能性から判断され、その上で法令に準拠していない塀は、より厳しい判定がされると考えて良いでしょう。

1-2.擁壁が老朽化し危険となるおそれがある

傾斜地の住宅に見られる擁壁は、崩壊すると非常に危険なのは言うまでもないですが、擁壁について国土交通省のガイドラインで例示されているのは以下の3点です。

  • 擁壁表面に水がしみ出し、流出している
  • 水抜き穴の詰まりが生じている
  • ひび割れが発生している

各自治体の認定基準を確認すると、この3点をそのまま引用しているだけの手抜きばかりで、具体的な判定方法を設けている自治体は少数でした。

したがって、擁壁の危険度は「総合的に判断する」という魔法の言葉でしか表せないのですが、同じく国土交通省から示されている「宅地擁壁老朽化判定マニュアル(案)」を参考にしている自治体が多いです。

宅地擁壁老朽化判定マニュアル(案)

このマニュアルを見ながら点数化して判断するのがベストで、以下はもう少し簡便なチェック項目として参考にしてください。

1-2-1.擁壁の種類・高さ・経過年数

【擁壁の種類】
擁壁の構造には種類があり、それぞれ耐久性も変わります。そのため、種類だけで危険度が高いと判定される可能性も考えられます。

以下は、危険度が高いとされている順に特徴を記載していますが、当然ながら状態によって評価は変わることに注意してください。また、A~Dの擁壁は構造上の問題があるかもしれないので、専門家等に相談を検討しましょう。

A.空石積み(空積み)擁壁
石やブロックを積み上げた簡易な擁壁で、イメージとしては城壁です。
B.張出し床版付擁壁
宅地面積を拡大するため、擁壁から張り出した床版を支柱で支えている形状です。
C.二段擁壁
文字通り擁壁がひな段状になっているもので(二段以上もあり)、下段擁壁の荷重設計が十分ではない可能性があります。
D.増積み擁壁
既存擁壁の上に、擁壁を繋げて積み増したものです。後から積み増しているので、既存擁壁の荷重設計が十分ではない可能性があります。
E.練石積み擁壁
石やブロックを積み上げ、隙間にモルタル等を充填して強度を上げている擁壁です。
F.重力式コンクリート擁壁
擁壁の自重で背面土を支える無筋のコンクリート擁壁です。断面は台形型になっていることが多いです。
G.鉄筋コンクリート擁壁
鉄筋を入れて強度を増したコンクリート擁壁で、断面はL型が良く使われます。

【擁壁の高さ・経過年数】
高さ・経過年数はそれだけで評価に直結するものではなく、擁壁の状態が悪化している場合に、高いほど古いほど危険が大きいとされる指標です。

目安としては、高さ2m未満なら評点なし、2m超~5m未満を高いほど大きな評点、5m以上を最大評点としていた自治体がありました。

経過年数については、2009年に公表された「既存造成宅地擁壁の耐久性に関する実態調査」において、築後20~30年で3割が危険度「中」、築後30~40年で半数以上が危険度「中」、築後40年を超えると危険度「大」が見られるようになるという報告があります。

したがって、築後30年を超えている擁壁は、種類にかかわらず何らかの劣化が起こっていると考えなくてはなりません。

1-2-2.水のしみ出しと水抜き穴

【擁壁表面の湿り気】
擁壁表面が乾いていると問題ありません。

石積み・ブロック積みの目地や、コンクリートに湿り気を感じる場合は、擁壁上の地盤をチェックしましょう。地盤が湿っていて、かつ擁壁表面も湿っているなら、排水がうまくいっていないので要注意です。

目視でも水のしみ出しや、その跡が確認できるようなら危険だと言えます。また、鉄筋コンクリート擁壁の場合は、鉄筋の錆汁がないか確認してください。

【水抜き穴】
古い擁壁では水抜き穴がないこともあり、その場合でも高さが2m以内(特に1m以内)なら問題になることは少ないでしょう。

高さが2mを超える擁壁では、水抜き穴が3㎡につき1か所以上、内径が75mm以上であるか、破損がないかチェックします。3㎡は1坪弱ですから、感覚的には成人男性が両手を広げた長さの正方形くらいです。

また、水抜き穴がない又は少ないと、危険度の高い擁壁と判定されますが、水抜き穴が詰まっていても本来の機能を果たしません。

出口付近の詰まり(ゴミや石・草で詰まってるなど)は、改善しやすいので可能な限り取り除いておきたいところです。一方で、入口(奥側)から土砂等が流入して詰まっている場合は改善が難しく、排水機能が失われているため重い判定となります。

1-2-3.ずれ・ひび割れ(クラック)等の変状

【ずれ・不同沈下】
擁壁の継ぎ目が前後にずれていないか、不同沈下で上下にずれていないかチェックします。また、ずれと共にひび割れや傾斜が変わっていることも考えられます。

目安としては、ずれが5mm未満を軽度、5mm~20mmを中度、20mm以上を重度としている自治体がありました。

【ひび割れ(クラック)】
ひび割れは幅1mm以上のものを対象とし、ひび割れの箇所が一部なのか全体なのか、幅や深さによっても評価は変わります。コンクリート製の擁壁にできる表面的な細いひび割れ(ヘアクラック)は無視してかまいません。

ひび割れの方向は、縦方向よりも横方向のほうが重大だと捉えられます。その理由は、横方向のひび割れが背面土圧に対する強度不足で起こることがあるからです。

練石積み擁壁では、石・ブロックの目地に沿ったひび割れよりも、積石そのものに達しているひび割れのほう深刻であり、コンクリート製の擁壁では、後述のアルカリ骨材反応も認められるとより深刻です。

なお、長いひび割れが擁壁全体を縦断・横断していると、深さによっては完全に破断しており、ずれが伴っているとさらに危険です。

【傾斜の変化・ふくらみ】
擁壁が背面土圧に負けて傾き始めている、石積みの擁壁がふくらむといった、目視でも確認できる変化は危険度が高いです。

元々の状態を知らないと判断は難しいですが、明らかに不自然な傾斜・ふくらみ、擁壁の一部が折れてしまっている(石積みなら抜け石がある)状態は、確実に重い判定がされます。

【アルカリ骨材反応】
コンクリート製の擁壁では、アルカリ骨材反応というひび割れを伴った特徴的な劣化状態を示すことがあります。

アルカリ骨材反応によるひび割れは、重力式(無筋)コンクリート擁壁ではランダムな亀甲状に、鉄筋コンクリート擁壁では鉄筋に沿った方向になりやすいと言われています。

また、ひび割れから白色(黄褐色やピンクっぽいことも)のゲル状物質がしみ出していることが多く、両方が見られる場合は、アルカリ骨材反応が起きていると考えて良いでしょう。

擁壁全面で発生しているほど、ひび割れの幅が広いほど危険度が高いと評価されます。

2.著しく衛生上有害となるおそれのある状態のチェック

2-1.建築物又は設備等の破損等が原因のもの

【アスベスト(石綿)の飛散】
危険度の高い吹付けアスベストが、木造住宅に使われていることは少ないと思われますが、建築基準法でアスベストが禁止された2006年9月1日以前は、アスベストを含む建材が良く使われていました。

建材に含まれているアスベストは、ただちに健康被害を引き起こすものではない一方で、建材が破損した場合に、粉塵となって飛散するおそれがあります。

しかも、老朽化が進んでいる空き家ほど、築年数が古い=アスベスト含有建材が使われていたかもしれないという悪い図式です。

ところが、建材にアスベストが含まれているかどうかは、一見しただけではわからないので、施工業者や建築図書の確認・専門業者への診断依頼など必要になるでしょう。

【浄化槽・排水口】
下水道が整備されていない地域は、浄化槽によって生活排水を処理しています。浄化槽が破損していないか、破損による汚物・汚水の流出ならびに臭気の発生をチェックします。

排水口についても同様ですが、トイレが汲み取り式の場合には、し尿が残っていて臭気が発生していないか、洋式トイレの封水(便器にたまっている水)が切れて下水管から臭気が上げっていないかなど、意外と発生源は多いです。

なお、調査する人の嗅覚・気温・風向き(屋外の場合)によっても感じ方が変わること、調査時に無臭・微臭であっても、発生源がある限り拡散しないとは限りません。

現に周辺住民の生活へ支障を及ぼしていると判定は重くなります。

2-2.ごみ等の放置、不法投棄が原因のもの

【ごみ等の放置・不法投棄】
いわゆる「ごみ屋敷」の状態は、周辺住民から苦情が来やすい状態の1つで、敷地からごみがあふれていると確実に近所迷惑です。

また、目が行き届いていない空き家は不法投棄の温床になりやすく、塀や草木が目隠しになっていると、外部から見えにくいため不法投棄されやすい傾向があります。

さらに、放置物から異臭が漂っていると、周辺への悪影響は避けられないですし、生ごみのように腐敗するものは論外でしょう。

腐敗しない物品でも、特殊な処分を要する産業廃棄物・化学薬品・有機溶剤など、不法投棄は何が捨てられるかわからず要注意です。

【ハエ・ネズミ等の存在】
不衛生な状況には、ハエやネズミなどが付き物です。それらの害虫・害獣が集まるとすれば、大抵の場合に異臭もします。

また、放置された物品に雨水が溜まり、そこにボウフラが湧いて、蚊の大量発生に繋がることも珍しくありません。

ただし、ハエや蚊のような虫は風の強い日だと確認しにくく、ネズミは昼間おとなしくしてることが多いので、調査しても衛生上有害だと判定できないことも当然にあります。

3.著しく景観を損なっている状態のチェック

3-1.既存の景観に関するルールに著しく適合しない状態

景観に関するルールは、景観法に基づく景観計画、都市計画区域・準都市計画区域内に定める景観地区、自治体が定める景観条例、景観計画区域内の住民合意による景観協定など様々です。

その内容は、各自治体や地区ごとにローカルルール(意匠や色彩など)が定められているため、ここではチェック項目を用意しませんでした。

また、空き家の所有者がこれらのルールとの適合性を全て確認するのは難しく、「著しく」適合しないかどうかの判断も、調査する側の印象に過ぎません。

そのため、自治体では担当部署での検討を十分に行い、必要なら景観アドバイザー等の第三者に助言を求めるなどして、客観性のある「著しく適合しない状態」を判定することになるはずです。

3-2.周囲の景観と著しく不調和な状態

景観に関するルールの有無にかかわらず、空き家の状態が周囲の景観と調和しているかをチェックするのですが、こちらも調査する側の印象によるものが大きいです。

本来ならば、法令・条例等を遵守して建てられている以上、周辺と調和していないとしても、どのような家を建てようと所有者の自由ですよね。

したがって、この場合の「著しく不調和な状態」とは、不調和に加えて居住用住宅としても管理が不適切な状況を前提としています。

【落書きや汚れ】
スプレー缶等を用いた落書きは、敷地外からでも確認できるかどうかです。

屋根や外壁が鳥などのフンで汚れている場合、これはどんな家でも避けられないとはいえ、放置されたことで大量に蓄積していると、景観よりも衛生上の問題として判定されるでしょう。

なお、塗装が激しく劣化してまだらになっている状態も、一応は景観の不調和と言えなくもないですが、そのことだけで特定空き家に認定されるとは考えにくいです。

【窓の状態】
多数の窓ガラスが割れたまま放置されていると、危険性と景観不調和の両方を伴います。また、後述する外部からの侵入者を招きやすくなる点でも、窓ガラスが割れている・無い状態は重く判定されます。

【立木・壁面緑化】
立木に手入れがされておらず、外観で空き家が隠れてしまっている状態までになると、景観の不調和だと捉えられます。

また、ツル性植物による壁面緑化は、むしろ景観の向上や壁面温度を下げる目的でされるものですが、それはあくまでも家の機能が正常な場合であって、例えば窓が開かないほどツルに覆われていると正常とは言えません。

特に、特定外来生物のアレチウリ、皮膚のかぶれを起こすツタウルシのように、害のあるツル性植物は、景観以外でも問題は大きいです。

【ごみの放置・散乱】
衛生上の問題として既に取り上げていますが、異臭を伴うものではなくても、ごみの放置は景観に影響すると考えられます。

4.放置することが不適切である状態のチェック

4-1.立木が原因のもの

生きている立木は、今後も枝を伸ばして広がるおそれが、朽ちている立木なら倒れるおそれがあり、いずれにしても放置することは適切ではありません。

ただし、立木の存在そのものを問題とするのではなく、次のような周辺への悪影響を考慮して判定されます。

【チェック内容】

  • 近隣の道路や敷地に枝等が大量に散らばっていないか
  • 枝等が道路にはみ出して通行の妨げになっていないか
  • 枝等が電線や道路標識等にかかっていないか
  • 倒木による被害が発生するおそれがないか

中でも判定が重くなるのは、周辺住民だけではなく不特定多数の通行人・通行車両にまで、悪影響を及ぼす道路へのはみ出しです。

極端な例を挙げれば、細い道路に塀で見通しの悪い交差点が、立木の繁茂によりさらに見通しが悪くなっていたり、信号・道路標識・カーブミラーなどが隠れていたりする状態は、間違いなく改善が必要ですよね。

もちろん、このような状態は空き家であるかどうかとは無関係に、道路関係法令によって行政指導などされるべきですが、空き家の場合には所有者探しから始めなくてはならない事情もあり、特定空き家に認定して改善を求めていく手法は有効でしょう。

4-2.動物等が原因のもの

虫・動物については、空き家でなくても多少は集まってくるものです。

例えば、花があればハチが来ますし、庭木には鳥も訪れます。ですから、常識的な範囲で虫や動物がいても何ら問題ではありません。

しかし、以下のような虫・動物が増えてしまうと、放置することが周辺住民の生活に悪影響を及ぼしている、または及ぼすおそれがあるため、特定空き家に認定して空き家所有者の管理不全を問う流れになります。

虫類:ハエ、カ、スズメバチ、ゴキブリ、ノミ、シロアリ、蝶や蛾の幼虫など
哺乳類:ネズミ、ハクビシン、アライグマ、コウモリ、犬、猫など
その他:鳥類、爬虫類

また、動物のフンや死がいが大量にあると不衛生です。つまり、空き家に棲みついている痕跡や、巣の存在が確認できれば、その姿を確認できていなくても悪影響を予見できるということです。

【チェック内容】

  • 鳴き声やその他の音がしていないか
  • ふん尿や汚物により臭気が発生していないか
  • 毛や羽毛が大量に飛散していないか
  • 虫が大量に発生していないか
  • 棲みついた動物が周辺に侵入・飛来していないか

4-3.不適切な管理等が原因のもの

主なチェック内容は、防犯や防災に関するものです。

特に、空き家への放火は周辺住民にとって脅威でしかなく、もらい火で被害を受けたら……と不安でしかないでしょう。

2018年の消防統計によれば、建物火災20,764件のうち、放火(1,334件)と放火の疑い(794件)を合計すると、2,128件(10.2%)もありました。

不法侵入や放火を完全に防ぐことはできませんが、誰でも出かけるときはカギを閉めるように、空き家にも最低限の予防措置は必要です。

【チェック内容】

  • 門扉・玄関・窓が開放されておらず施錠されているか
  • 可燃ごみ、枯れ草、枯れ枝、木材等の可燃物が堆積していないか
  • 灯油・ガソリン・ガスボンベ等の危険性を持つ物質が放置されていないか
  • 隣地や道路へ土砂等の流出、落雪の危険性がないか

周辺への影響度について

最後になりますが、特定空き家の認定は解説してきた空き家の状態チェックに加え、周辺への影響度(悪影響の程度と危険等の切迫性)が考慮されると説明しました。

では、周辺への影響度はどのように判断されるのでしょうか?

この判断も一律で語れるものではありませんが、何らかの指標がないと空き家の所有者としては困ってしまうので、一部の自治体で採用されている基準を紹介します。

空き家の高さと隣地までの距離

空き家の高さと、隣地(または道路、以下同じ)から空き家までの距離を利用して、次のように計算します。

影響度指数=空き家の高さ÷隣地までの距離

この影響度指数は、空き家の高さが高くなるほど、隣地までの距離が短くなるほど大きくなります。つまり、広い敷地に低い建物だと影響度指数は小さく、狭い敷地に高い建物だと大きくなるということです。

そして、空き家の高さと隣地までの距離が等しいとき、影響度指数は1になることから、1以上は影響が大きいとしている自治体がありました。

ざっくりとした方法ですが、隣地との境界から空き家に向かって45°の仮想ラインを引いたときに、仮想ラインが空き家にぶつかれば影響度大、空き家にぶつからなければ影響度小と考えても良いでしょう。

また、この関係を応用して、空き家の高さを2階以上の全体と、1階の高さに分けて判定している自治体もありました。

【参考】
隣地までの距離>空き家全体の高さ→周辺への影響小
隣地までの距離=空き家1階~2階の高さ→周辺への影響中
隣地までの距離<空き家1階の高さ→周辺への影響大

周辺の土地の利用状況

これはわかりやすいでしょう。空き家の高さと隣地までの距離にも関係しますが、密集した市街地であるほど影響度が高いです。

さらに、隣地が不特定多数に利用される公共施設(避難所、学校、病院など)であれば、なおさら影響度が高いと判定されます。

接する道路の利用状況

空き家の倒壊、ならびに建材・附属物の落下・飛散は、前面道路だけが対象とは限らないため、接する道路全てについて影響度を考えておかなくてはなりません。

基本的に、通行量が多ければ多いほど影響が大きく、特に通学路や避難経路であればさらに影響が大きいと判定されます。

その一方で、近隣住民のみが利用する生活道路や、空き家にしか繋がっていない路地等は、影響が小さいと判定されます。

これは、空き家の倒壊時または建材・附属物の落下・飛散時に、そこへ通行人・通行車両がいる可能性から、通行量の多い道路のほうが危険だと考えられるためです。

まとめ

長々と解説してきましたが、特定空き家の認定では、かなり細かいところまで調べることがおわかりいただけたでしょうか。

自分の空き家をチェックしてみて、怪しい項目がある場合には、速やかに役所へ相談するなどして特定空き家に認定されることを避けるべきでしょう。

また、近所にある空き家で困っており、どうしても所有者が対処してくれないときは、チェックして役所に知らせると、役所としてもスムーズに動きやすいはずです。

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