総務省から公表されている「固定資産の価格等の概要調書」から、農地の固定資産税を都道府県別・市町村別で一覧表にしてみました。
農地に対する固定資産税は、評価と課税方法によって次の3つに区分されています。
- 一般農地
- 市街化区域外の農地(市街化調整区域や都市計画区域外など)で、農地評価、農地課税となります。郊外から農村部にある農地を思い浮かべてください。
- 一般市街化区域農地
- 特定市以外の市街化区域にある農地です。宅地並み評価、農地に準じた課税となります。
- 特定市街化区域農地
- 三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)を対象とし、宅地並み評価、宅地並み課税となります。全ての市が特定市の県と、一部の市だけ特定市の県があるので要注意です。
評価や課税の詳しい違いについてはこちら。
また、介在農地といって、農地から転用の許可・届出があったにもかかわらず農地で利用している土地は、実質的に転用後(宅地や雑種地など)の潜在的価値があると評価されるため、一覧表では市街化区域農地に含まれています。
さらに、田と畑でも固定資産税はずいぶん異なるので、それぞれの違いがわかるように、全体・田・畑に分けました。したがって、都道府県別・市町村別で2種類、区分が3種類、全体・田・畑で3種類を組み合わせた18の表があります。
都道府県別の一般農地固定資産税
一般農地・全体
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
農地評価・農地課税で固定資産税が安い一般農地は、最高でも兵庫県・大阪府の1,700円/10アール程度、最安の北海道は200円/10アール程度です。
農地課税という言葉の印象から、いかにも農地だけの低い税率のように思ってしまいますがそうではありません。標準税率はどの土地も1.4%です(市町村の条例で1.4%を超えている場合あり)。
10アールは1,000㎡(約300坪・約1反)ですから、普通の一戸建てが5,6軒くらい建つ広さだと思えば、その安さがイメージしやすいのではないでしょうか。
もっとも、一般農地は転用が難しい(良好な農地は転用許可が下りない)ため、耕作限定の制限付きで考えなくてはなりませんが……。
一般農地・田
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
北海道と沖縄県を除く全ての都府県で、1,000円/10アールを超えています。一般農地の場合、田と畑を比べると、総じて田のほうが固定資産税は高いです。
田1反から得られる収入は10~15万円(所得では3万円前後)くらいなので、そう考えると、この安い固定資産税ですら収入の1%(所得の3%)を超える水準になります。
一般農地・畑
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
一般農地の畑では、ずば抜けて耕地面積が広い北海道の固定資産税が安いです。
広さの例として「東京ドーム○個分」という表現をよくされますが、北海道の一般農地・畑は、東京ドーム1個分で固定資産税が5,000円ほど! さすが北海道ですね(もちろん地域差あり)。
都道府県別の一般市街化区域農地(介在農地含む)固定資産税
一般市街化区域農地・全体
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
各県の負担水準にも影響されるとはいえ、宅地並み評価に変わることで、一般市街化区域農地の固定資産税は一気に高くなります。
固定資産税の急上昇を抑える目的で導入された「負担調整措置」で用いられる数値。当年度の課税標準(本則)に対する前年度の課税標準の割合を示す。
令和3年度の一般農地と比べて、秋田県(18倍)から神奈川県(139倍)まで差は大きいですが、全体的には30~70倍程度で収まる県が3/4を占めます。
地方では、高知県の市街化区域農地がとても高い水準で、以前から税負担が農業経営を圧迫しており、生産緑地制度が導入される経緯となりました。
一般市街化区域農地・田
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
市街化区域農地の宅地並み評価では、通常必要とされる造成費を控除する都合上、畑よりも田のほうが造成費(控除)は大きくなって固定資産税が低くなりがちです。
令和3年度では、飛びぬけて高い神奈川県(106倍)はさておき、20~60倍までが大半でした。
ただ、このレベルでも稲作による所得がなくなってしまうか赤字になるので、固定資産税を納めるために米を作っているのと同じでしょう。
一般市街化区域農地・畑
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
一般農地は畑の固定資産税が安いのに対し、市街化区域農地は完全に逆転して畑が高くなります。
令和3年度は、北海道(210倍)、高知県(196倍)のほかにも100倍以上が多く見られ、最も低かったのは長崎県(41倍)でした。
このあたり、単に造成費の違いだけではなく、田は用水の関係で場所を選ぶこと(畑は市街地でも可能なこと)が関係してくるのかもしれません。
都道府県別の特定市街化区域農地(介在農地含む)固定資産税
特定市街化区域農地・全体
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
三大都市圏、とりわけ埼玉県・東京都・神奈川県は非常に高い水準になっている一方、茨城県・三重県・奈良県はいずれも5万円台(令和3年度)と、一般市街化区域農地並みの低い水準です。
宅地需要の高い三大都市圏なので、転用して活用するか、営農するなら生産緑地指定を受けるかしないと、1ヘクタール数百万円の固定資産税を納付しながら農業を続けるのは、なかなかメンタルが大変そうです。
特定市街化区域農地・田
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
固定資産税の高さから、特定市街化区域農地で米作りをしても収益は上げられません。
しかし、固定資産税は原則として現況主義(使われている用途に応じた課税)であることを踏まえると、田として課税されているからには、現況が田なのでしょう。
一般市街化区域農地と同様に、特定市街化区域農地でも畑より田のほうが総じて固定資産税は安いです。令和3年度では、一般農地と比べて茨城県(23倍)、千葉県(32倍)、三重県(32倍)、奈良県(33倍)とそれほど高くない県もありました。
特定市街化区域農地・畑
都道府県 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
全体的に下落傾向ではありますが、埼玉県、東京都、神奈川県の高さはすごいですね。数字が物語っているので説明不要かと思います。
とはいえ、畑の場合は収益の大きい野菜や果物、花きなど、選択肢がある点において田とは決定的に異なりますし、農地を維持するため兼業で耕作しているケースもありそうです。
市町村別の一般農地固定資産税
一般農地・全体
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
一般農地・田
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
一般農地・畑
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
市町村別の一般市街化区域農地(介在農地含む)固定資産税
※一般市街化区域農地の市町村別一覧表には、特定市が含まれていません。
一般市街化区域農地・全体
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
一般市街化区域農地・田
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
一般市街化区域農地・畑
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
市町村別の特定市街化区域農地(介在農地含む)固定資産税
※特定市街化区域農地の市町村別一覧表には、特定市以外の市が含まれていません。
特定市街化区域農地・全体
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
特定市街化区域農地・田
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール
特定市街化区域農地・畑
市町村 | 令和3年度 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 |
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※データ:固定資産の価格等の概要調書
※単位:円/10アール