不動産を所有している限り、どうしても避けられないのが固定資産税・都市計画税です。
固定資産税・都市計画税は、土地や家屋の評価額(市町村が一定の基準で算定した価値)に課税されるため、その負担が重くても所有者から何かできることはありません。
しかし、税率が市町村で異なることはあまり知られておらず、知っていたとしてもどのくらいの差があるのか、把握している人は少ないでしょう。
とりわけ、マイホームを建てる、賃貸経営の物件を探している、事業用の土地や建物を探しているなど不動産の購入予定があり、候補物件が複数の市区町村にあるときは、固定資産税率・都市計画税率にも目を向けるべきです。
固定資産税率・都市計画税率の一覧表は大きいため、先に説明をしておきます。
固定資産税と都市計画税における税率の特徴
まず、固定資産税は1.4%が標準税率とされており(地方税法第350条第1項)、1.4%を採用している市町村が大多数です。
一方、地方税法第1条第1項第5号は、標準税率を「地方団体が課税する場合に通常よるべき税率でその財政上その他の必要があると認める場合においては、これによることを要しない税率」としています。
つまり、財政が厳しい市町村は、条例で1.4%を超える固定資産税を課税することができます。当サイトが調べた範囲では1.75%が最高でした(北海道三笠市、確認は令和4年度分)。
標準税率を超えて課税する税率を超過税率といい、固定資産税の税率には上限が設けられていません(上限は2004年に廃止されました)。
都市計画税の税率には上限がある
市街化区域の不動産に課税される都市計画税には、0.3%を超えてはならない規定があります(地方税法第702条の4)。
これを制限税率といい、都市計画税は最高0.3%となるのですが、市街化区域であっても課税状況は市町村で異なり、必ず課税されているとは限りません。
- 以前は課していたが停止した
- 以前は課していたが条例を廃止した
- 条例制定当初から当分の間は課さないと定めて延期中
- 条例の施行日が定められておらず未施行
このような理由から、都市計画税が課税されていないケースもありますので、最新の情報は各市町村のHPを見るか直接問い合わせてください。
都市整備に必要な分を課税する性質上、都市計画税は0.01%(一部は0.005%)まで刻んで課税されています。
なお、都市計画税は目的税(使途が決められた税金)ですから、必要以上に課することはできず、主な使い道は下水道整備、市街地開発、公園整備など、他には過去の整備事業の償還金です。
もっとも、都市計画税の課税区域だけに「特別な」整備事業が行われれるのであれば、受益者負担としてまだ理解は得られるのですが、実際には、他の区域でも整備事業は必要なのであって、その財源は一般財源です。
また、大きな財布(全体の事業費や公債費)に都市計画税が充当されていくのであり、都市計画税のみの小さな財布で課税区域の整備事業を全てやり繰りするわけではありません。
こうした実情から、都市計画税は負担に対する受益感を得られない納税者の不満が大きく、きわめて理解を得られにくい税金です。
したがって、都市計画事業が一段落した、大きな都市計画事業の予定がない、余剰金が発生しているなど、課税の根拠が希薄になると廃止(または当面停止)になりやすいです。
固定資産税・都市計画税は物税なのに税率が異なる現実
物税とは、物そのものに対する税金のことです。課税対象が誰の所有であるかは問われません。
例えば、1件の家に課税するとして、一般市民が長期間の住宅ローンで購入した場合でも、法人が事業目的で購入した場合でも、富裕層が投機目的で購入した場合でも、固定資産税・都市計画税は評価額に応じて課税されます。
これは、本来的な物税の位置づけから当然なのですが、問題は誰が所有しているかではなく、どこに存在するかで税率が変わってしまうことです。
おかしいと思いませんか?
同じ不動産は二つと存在しないとはいえ、同じ価値と評価された(評価額が同じ)不動産に対し、場所が違うだけで税率が変わるのです。
これが売買価格であれば、需要と供給の市場原理がありますので、同じ評価額の不動産が異なる価格で取り引きされることに何の不思議もありません。しかし、税となると話が別です。
要するに、固定資産税・都市計画税は、多くの人が考えているよりも不公平だというのがこの記事の大きなテーマです。
たかが0.1%と侮ることなかれ
固定資産税と都市計画税の税率を合計すると、標準的には1.4%+0.3%=1.7%ですし、税率が違うといっても5%や10%のような差ではありません。
せいぜい0.1%単位の小さい数字なので、気にならない人も多いでしょうか。
しかし、不動産は金額が大きいことに加え、繰り返しますが「同じ価値(評価額)で違う税率」だという事実は気にしておくべきです。
最大約35.7%の格差という隠された衝撃
当サイトの調査では、固定資産税率+都市計画税率の合計税率は、最高が1.9%、最低は固定資産税のみの1.4%でした。
比率にすると、1.9÷1.4=1.35714…約35.7%増という衝撃の数字になります。
これを10%の消費税に置き換えてみた場合、その地域で物を買っただけなのに13.57%取られたら、ばかばかしくなってきませんか?
固定資産税・都市計画税は、元の税率が小さいので0.1%変わると影響が大きいです。
元が1.4% ⇒ 0.1%増えると約7.14%増
元が1.5% ⇒ 0.1%増えると約6.67%増
元が1.6% ⇒ 0.1%増えると6.25%増
元が1.7% ⇒ 0.1%増えると約5.88%増
元が1.8% ⇒ 0.1%増えると約5.56%増
もっとも、都市計画税のある地域と無い地域を比較することへの是非はあるでしょう。
そこで、比較対象を都市計画税がある地域に限定すると、最低の合計税率は1.45%でした(千葉県成田市、確認は令和5年度分)。
比率にして、1.9÷1.45=1.31034…約31%、この3割増しをどう見るかです。
もし、気になる市区町村があったら、一覧表で税率を確認してみてください。
全国市区町村別の固定資産税率・都市計画税率一覧
固定資産税率・都市計画税率一覧表は、都道府県、固定資産税率1.4%超、都市計画税率0.3%未満、合計税率1.7%超の絞り込みが可能です。また、見出し部分のクリックでソートができるようにしてあるので、税率のランキングとしても使えます。
ただし、情報は手作業で集めており更新は不定期です。ご了承ください。
石川県能登半島は合計税率が高い
一覧表を合計税率1.7%超で絞り込むとわかるのですが、固定資産税率・都市計画税率の合計税率には地域性が見られ、高い地域は北海道空知地方、青森県津軽地方の一部、石川県能登地方です。
特に、令和6年能登半島地震で甚大な被害を受けた地域は、そのまま合計税率の高い地域になっており、被災者の生活再建へ足かせとならないか懸念されるところです。
東日本大震災のときには、家屋が滅失してしまった土地をそのまま住宅用地(一定率の軽減があります)とみなす特例、取得した代替土地に家屋がなくても住宅用地とみなす特例、代替家屋に対する軽減特例などがありました。
おそらく、令和6年能登半島地震の被災地域にも同様の措置が講じられるでしょう。
ただ、東日本大震災後がそうであったように、高台の地価は高騰しがち、建築需要の急増と資材搬入が困難な状況下は建築費を増大させ、加えて新居に掛ける保険料の負担もあります。
そこにきて、高い税率では目も当てられないので、中長期的な税率の引き下げや国庫からの補助で、被災者の負担が和らげばよいのですが……。
※鹿児島県鹿児島郡三島村、沖縄県島尻郡渡名喜村、沖縄県島尻郡伊是名村は調べられませんでした。