不動産の捨て看板はなぜ減らない?違法行為が続く理由

街中でも住宅地でも、電柱などに設置された物件広告を見かけないでしょうか。

中には店舗名や医院名など、電柱の高い位置に道案内を兼ねて掲げられていることもありますが、これらは電柱広告として契約しており正規の広告です。

しかし、紙の周辺をテープで貼り付けたもの、紙を貼った板が針金で留めてあるもの、カラーコーンに広告を貼って道路に置いてあるものなど、容易に設置できて目の高さ程度までに設置されたものは、ほとんどが違法広告です。

このような広告は捨て看板(ステ看、捨てカンなど)と呼ばれます。イベントなど短期的な看板(特に立て看板)は、不要になって除去されることもありますが、多くは設置したら放置、つまり捨てる前提なので捨て看板というわけです。

捨て看板の内容は不動産に関するものが圧倒的に多く、景観を損ねるばかりか撤去されないので、地域住民にしてみると苦情を言いたくもなるでしょう。

ところが、捨て看板は減るどころか増えている気すらします。一体なぜ減らないのか?今回はこの点を解説していきたいと思います。

捨て看板の例

無限にパターンはありますが、典型例では次のような広告です。

sutekanban

とても魅力的な内容であることが多く、半信半疑で怪しいと思っていながら、もし本当だったら…と問い合わせくらいはしてみたくなるのも無理はありません。

しかし、違法広告をする不動産会社が、適法な物件を適法に紹介するのか?と考えれば、やはり捨て看板には手を出さないのが無難です。

当然ながら、不動産会社は違法を承知の上で捨て看板を設置するのですが、捨て看板をいくら見ても、誰が設置したのか追跡はできないようになっています。

具体的に不動産会社の会社名でもあるならともかく、個人の携帯番号だけで捨て看板の設置者まで特定するのは難しいでしょう。

連絡したところで、「自分は関係ない」とシラを切られると打つ手がなくなります。

連絡先がフリーダイヤルや固定電話の場合もあります。その場合、コールセンターなど取次業務をしているだけの存在で、不動産会社に直接繋がることはありません。

捨て看板の違法性

例に挙げた捨て看板は、不動産広告としての違法性もあるのですが、その点はさておき、広告内容に関係なく捨て看板は違法な扱いです。

※不動産広告は別記事で取り上げる予定です。

というのも、捨て看板が電柱に設置されると電柱の管理者に無断で使用していることになり、捨て看板が道路に置かれると通行妨害・道路占用になるので、本来は設置場所の管理者に許可を得なければならないからです。

また、屋外広告物には条例を設けている自治体が多く、軽犯罪法、道路交通法、道路法、自治体条例など捨て看板を取り締まる法的根拠はいくらでもあります。

しかしながら、捨て看板は基本的に現行犯でなければ取り締まることができない(設置者を特定できない)ので、どうにもならないのが実情です。

そもそも、設置と回収の両方で発見されるリスクから、回収せずに捨ててリスクを減らすのが捨て看板で、監視をしていなければ現行犯は難しいでしょう。

捨て看板は誰が設置している?

捨て看板は、不動産会社が下請け業者やアルバイトを使って設置させる場合もあれば、不動産会社の社員が自ら設置する場合もあります。

後者の場合は最悪で、自社の社員に違法行為をさせているのですが、時には研修と偽って無知な社員に設置させたり、業務として捨て看板の設置を強制したりします。

その際、社員が違法と知っているかどうかは関係ありません。何度も繰り返して現行犯逮捕されるケースは、不動産業界なら珍しくない話です。

所詮は軽犯罪なので、逮捕されずに厳重注意で終わるか、仮に逮捕されても起訴猶予が多いため、捨て看板に厳罰化を望む声もありますが、そこまでには至っていません。

一方、売主が自ら捨て看板を設置する例は少ないと考えられます。ただし、捨て看板を知っていながら黙認する人が存在することは否定できないでしょう。

自分の物件が捨て看板で広告されているのを見つけたら、売主は直ちに不動産会社へ抗議するべきですが、現実問題として手段を問わず売りたいからです。

捨て看板の約9割は不動産業という実態

東京都都市整備局は、毎年「捨て看板等の共同除却キャンペーン」において、一部の区や市で違反広告物の除却(撤去)をしています。

平成27年度は10区11市で行われ、9月1日から10月31日の2ヶ月間で、6,434枚の違反広告物が除却されました。その結果、驚くべきことに約9割が不動産業の広告です。

 平成27年度平成26年度平成25年度
金融業2枚83枚111枚
不動産業5,897枚(91.7%)2,438枚(83.9%)3,683枚(86.0%)
風俗営業88枚71枚86枚
その他447枚315枚403枚
合計6,434枚2,907枚4,283枚
※はり紙、はり札等、立看板等、広告旗の総数
※データ:東京都「第19回捨て看板等の共同除却キャンペーン」の実施結果について

公衆電話が通信の手段になっていた時代には、電話ボックスの中が金融業や風俗営業の捨て看板(ビラ)で占められるほど大量に存在していたのですが、金融業や風俗営業の捨て看板は減少しています。

それに対し、不動産業の捨て看板が一向に減る気配を見せていないのは、不動産業界における集客の特殊性にありそうです。

捨て看板が減らない理由

スマートフォンの利用率が高まった現在では、インターネット広告の割合が徐々に増え、紙媒体や屋外広告が減っているのは確かです。

今の時代、いくらでもある不動産ポータルサイトを見るだけで、把握しきれないほどの物件を確認できるのに、なぜ捨て看板のようなアナログな手法を使うのか、理解できない人が多いのではないでしょうか。

やがてテレビ広告をしのぐと言われるインターネット広告ですから、違法リスクと人件費をかけてまで捨て看板を設置するのは不思議ですよね。

捨て看板は費用対効果が高い

不動産会社は、捨て看板の費用対効果が高いからこそ、違法と知りつつもやめません。捨て看板は費用が安いだけではなく、反響が思いのほか良いからです。

一般消費者の視点では、全世界に発信されるインターネット広告のほうが良いと感じてしまいますが、物件周辺に狙い撃ちした捨て看板のほうが、見る人は少ないのに成約に繋がる問い合わせが多いようです(数ではなく割合です)。

例えば、ある物件をポータルサイトへ掲載することで、問い合わせが倍になったとします。ところが、広告費と問い合わせに対応する人件費が増加するのに対して、運よく成約するのは1人しかおらず、不動産会社の利益は大きく減ります。

また、広告費だけではなく広告効果の側面もあります。大量にある他の物件に紛れて広告されると目立ちませんが、捨て看板は広告がポンと目に入るでしょう。

どれだけ物件を扱い、どれだけ顧客を増やしていくのかで不動産会社の利益は決まります。多額の広告費をかけて多くの人に発信しても、対応だけが増え顧客獲得に結びつくとは限らない広告よりも、反響を呼びやすい捨て看板を使いたいのです。

捨て看板の物件は信用できるのか

捨て看板の物件にも種類があり、単に通常の物件を載せる場合もありますが、ワケあり物件を載せるケース、違法リスクを承知で早く売りたい、両手取引をどうしても狙いたいなど、様々な事情が絡んできます。

いずれにしても確かなのは、捨て看板を使う不動産会社が顧客にとって良いとは言えないことです。また、捨て看板に掲載される物件が実在するとは限らず、とにかく問い合わせに結び付けて、他の物件を紹介するための客寄せのケースもあります。

不動産業界では、捨て看板を「必要悪」のように考えている風潮もあって、捨て看板を使う全ての不動産会社がダメとも限りませんが、良くない不動産会社の可能性があるだけで敬遠するべきでしょう。

違法行為を黙認してでも捨て看板の物件が欲しいのか。自分に対して違法行為をされる可能性はないのか。もし問い合わせるならこの点を考えておくことです。

捨て看板での集客はインターネットと異なる

インターネットでの問い合わせはメールが中心です。消費者心理としても、不動産会社に個人情報を教えるのはためらいがあり、とりあえず物件の情報が欲しいだけならメールで済ませたいのではないでしょうか。

ところが、不動産会社はメールアドレスしか知らない相手に物件の情報を渡したくありませんし、対人スキルとトークを利用したアナログな営業スタイルが得意なので、本気とも思えないメール相手に何度も対応をするのは嫌います。

こうした事情で、インターネット経由の問い合わせでも、入力フォームに住所氏名・電話番号を必須としているケースが目立ちます。

捨て看板の場合、電話での問い合わせから始まります。しかも、捨て看板から問い合わせてくる人は、本気で買いたいと考えている割合が多いため、インターネット経由の問い合わせよりも営業しやすいのです。

金融会社の捨て看板は、お金に困っている人からさらに絞り取ろうとする悪徳業者も多いですが、不動産会社の捨て看板は、連絡をしても物件を紹介してもらうだけですから、敷居が比較的低いのも問い合わせに繋がりやすい理由です。

不動産会社にとって新規顧客の開拓は永遠のテーマで、仮に捨て看板がウソでも、本気で買いたい人なら類似物件を紹介されても買うでしょう。

インターネットの普及で物件探しは随分と楽になりました。しかし、インターネット上に掲載されず不動産会社が抱える未公開物件は相当数あって、優良物件ほど外部に出さないで営業するのが不動産業界です。

捨て看板の通報先はどこにするべき?

最初に思いつく通報先は警察です。しかし、現行犯でもない上に設置者が特定できず、大量にある捨て看板を警察が毎回対応していくのは難しいでしょう。

また、不動産会社を特定できたとしても、日常的に捨て看板を繰り返している悪質なケース以外では、厳重注意程度で済まされそうな気がします。

同じように苦情窓口や道路管理者としての行政、電柱の所有者として電力会社・電話会社も考えられますが、行政ができるとしても法令・条例に基づく除却程度、電力会社・電話会社に至っては、むしろ被害者なのでお門違いです。

不動産会社が通報されて困るとすれば、不動産広告を監視している不動産公正取引協議会、不動産会社の多くが加入する宅地建物取引業協会など業界団体でしょうか。

特に不動産公正取引協議会は、不動産広告についての苦情や相談も受け付けており、捨て看板にも目を光らせているので有力です。

他には、宅建業免許の免許権者である都道府県に、宅建業者の指導を担当する部署があり、免許と関係してくるだけにこちらも有力かもしれません。

まとめ

捨て看板は昔の手法だと思っているなら大間違いで、現在でも捨て看板は大量に存在して、ほとんどが不動産業に関連しています。

自分を守るためには、怪しい情報に手を出さないほうが良く、不動産の売買は金額が大きいので信用できる不動産会社に仲介してもらうべきでしょう。

なお、至るところにベタベタと貼られた捨て看板は景観を悪化させ、違法行為だけに容認することはできませんが、違法行為に対しても自力救済(実力行使で権利侵害から回復すること)は原則許されていません。

よって、捨て看板が気に入らないという理由はもちろん、権利侵害を受けていても勝手に撤去できず、苦情を入れて対応してもらうしかないのです。

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