不動産を売却するときには、親族や知人などに売る場合を除くと、不動産会社に広告を出してもらい購入希望者の仲介をお願いします。
その際に不動産会社と結ぶ契約、つまり、売主にとっては売却依頼のための契約を「媒介契約」と呼びます(媒介とは仲介の意味です)。
媒介契約には、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があって、不動産会社と売主の合意があれば、いずれの媒介契約を結んでも構いません。
しかし、不動産会社は頻繁に媒介契約を結ぶので慣れたものですが、一般消費者である個人の売主は、媒介契約の知識も欠けているでしょう。
そこで、前半では3つの媒介契約は何が違うのか、後半では媒介契約をどのように選ぶのが適切か説明していきます。
媒介契約の違い
媒介契約の違いが現れる部分は、次のとおり決まっています。
- 同時に複数社と媒介契約できるか
- 自分で見つけた買主と売買契約(自己発見取引)できるか
- 契約期間は何ヶ月か
- レインズ登録の義務
- 業務報告の義務
以降、媒介契約の種類別に説明していきますが、国土交通省の標準媒介契約約款を前提としています。標準媒介契約約款に基づかない媒介契約も考えられるので、その場合は説明と一致しないケースがあることに注意してください。
専属専任媒介の特徴
複数社契約 | × | 自己発見取引 | × | 契約期間 | 3ヶ月以内 | レインズ登録義務 | 5営業日以内 | 業務報告義務 | 1週間に1回以上 |
専属専任媒介では、他の不動産会社と媒介契約することを禁止され、自分で探した買主との売買契約も禁止されます。
また、契約期間が3か月以内に制限され、3か月を超える契約期間を定めたとしても3か月とされます(宅地建物取引業法第34条の2第3項)。
このように契約期間が法律で制限されているのは、拘束力の強い専属専任媒介(専任媒介も同様)で、独占的な契約関係を長期間継続させることが不適切だからです。
契約期間を3か月以内とする契約更新は可能ですが、その条件として売主からの申出を必須としています(宅地建物取引業法第34条の2第4項)。よって、専属専任媒介契約に自動更新はありません。
専属専任媒介はレインズ登録と定期業務報告がある
不動産会社は、専属専任媒介契約の締結日の翌日から5営業日以内に、レインズ(REINS)へ登録する義務を負います(宅地建物取引業法第34条の2第5項)。
法令上、レインズ登録は媒介契約締結日の翌日から5日以内ではなく「5営業日以内」です。5日以内としているサイトが多いので、間違えないように気を付けましょう。
媒介契約締結日は民法第140条の規定(初日不算入)から含まれません。媒介契約締結日とは、媒介契約の締結に意思の合致が確認できた日で、媒介契約書の交付が遅れても媒介契約書の交付日とはなりません。
レインズとは、不動産会社だけが閲覧できる不動産流通標準情報システムです。レインズに登録することで、他の不動産会社も買主を仲介できるようになります。
また、レインズから登録証が発行されるので、不動産会社は売主に登録証を渡さなくてはなりません(宅地建物取引業法第34条の2第6項)。
さらに、1週間に1回以上の定期業務報告が必須です(宅地建物取引業法第34条の2第8項)。業務報告の方法は規定されておらずメール報告も許されます。
専属専任媒介のメリット・デメリット
専属専任媒介のメリットは明らかで、必ず不動産会社を通じて売買契約が行われ、売れると仲介手数料が確保できることから、不動産会社に積極的な営業が期待できます。
毎週定期報告を受け、売主が現状を把握しやすいのもメリットになるでしょう。
その代わり、不動産会社に余程の過失がなければ、対応に不満があっても契約期間中は1社に拘束され、1社に任せた結果、悪意のある不動産会社に囲い込みを行われる危険性があるデメリットを持っています。
囲い込みとは、物件を独占して買主を自社で探し、売主と買主の両方から仲介手数料を取る「両手取引」を狙うため、他社からの紹介希望に応じない違法性のある行為です。
レインズ登録後は、他社も買主を仲介できるはずですが、囲い込みを行う不動産会社は、他社からの紹介希望に対し、商談中などと理由を付けて情報を渡しません。
必然的に売り遅れることで、売主に損害を与える結果となり、囲い込みをどのように規制していくのかは、不動産業界にとって重要な課題になっています。
専任媒介の特徴
複数社契約 | × | 自己発見取引 | ○ | 契約期間 | 3ヶ月以内 | レインズ登録義務 | 7営業日以内 | 業務報告義務 | 2週間に1回以上 |
専任媒介は、専属専任媒介よりも制限が緩くなっており、他の不動産会社と媒介契約することは禁止されますが、自己発見取引は可能になっています。
したがって、親族や知人・友人、インターネットで知り合った相手など、個人売買も視野に入れることができます。
個人売買が成立しようとしているのに、不動産会社が営業活動を続けていると経費が無駄になり、不動産会社が発見した購入希望者とトラブルを起こしかねません。
そのため、個人売買が成立しそうなときは、不動産会社への通知義務を媒介契約に盛り込むのが通常です。
契約期間においては、専属専任媒介と同様に3か月以内と定められ、売主からの申出による更新(自動更新なし)、更新後も3か月以内と変わりません。
専任媒介にもレインズ登録と定期業務報告がある
専属専任媒介との違いは、レインズへの登録が媒介契約締結日の翌日から7営業日以内(7日以内ではありません)になること、定期業務報告が2週間に1回以上と頻度が少なくなることです。
レインズへ登録するまでの期間が長くなることは、それだけ物件を独占できる期間が長くなり、定期業務報告の間隔が広がることは営業の手間が軽減されます。
要するに、専任媒介は専属専任媒介よりも不動産会社に優しいと言えるでしょう。
専任媒介のメリット・デメリット
専任媒介のメリットも、専属専任媒介と同じく1社に任せることで、不動産会社に営業努力を期待できる点です。頻度は少なくなりますが定期業務報告も受けられます。
加えて自己発見取引が許されるので、不動産会社の対応に不満があれば、自分で買主を探すことができるのもメリットになるでしょう。ただし、標準媒介契約約款では、自己発見取引に対して不動産会社の費用償還請求を認めています。
メリットの拡大と共にデメリットも拡大されており、専属専任媒介よりもレインズへの登録が若干遅れる点、定期業務報告が少なくなる点は見逃せません。
囲い込みの危険性についても、1社に任せる以上はなくならないので、自己発見取引の可能性がないなら、専属専任媒介よりもデメリットが多くなります。
一般媒介の特徴
複数社契約 | ○ | 自己発見取引 | ○ | 契約期間 | 自由 | レインズ登録義務 | なし | 業務報告義務 | なし |
専属専任媒介・専任媒介と全く異なり、複数社との同時契約を許し、なおかつ自己発見取引も制限されないので、最も自由なスタイルが一般媒介です。
もっとも、一般媒介は複数社と契約できるのに対し、専属専任媒介・専任媒介は1社に限定するのですから、一般媒介と専属専任媒介・専任媒介が混在することは起こらず、複数社との媒介契約は全て一般媒介で結ばれます。
売主の立場では、複数社と一般媒介契約を結び、競合他社を意図的に作ることで、早く売ろうと懸命になる効果を期待してしまうでしょうか?
しかし、現実はその逆に作用することが多く、ほとんどの不動産会社は他社に成約を取られるかもしれない一般媒介に、多額の広告費をかけて営業できません。
よって、自ら率先して一般媒介で契約しようとする不動産会社はおらず、一般媒介はほとんどが売主の要望です。それでも、一般媒介での契約が後の専属専任媒介・専任媒介に繋がる可能性から、とりあえず契約には応じると思われます。
一般媒介の契約期間に定めはない
宅地建物取引業法第34条の2第3項および第4項によって、専属専任媒介・専任媒介の契約期間は3か月以内に制限されています。ところが、売主を1社に拘束しない一般媒介では、法定の契約期間はなく、当事者の合意で自由に定めることができます。
ただし、標準媒介契約約款では3か月以内とされていることで、標準媒介契約約款に基づく媒介契約なら、3か月以内の契約期間になるはずです。
また、更新に売主の申出を条件とする宅地建物取引業法第34条の2第5項の規定も、一般媒介には適用されないため、一般媒介では自動更新があり得ます。一般媒介では必ず契約書を良く見て、契約更新の扱いを確認しましょう。
一般媒介にはレインズ登録と定期業務報告がない
専属専任媒介・専任媒介と異なり、一般媒介にはレインズへの登録義務や、依頼者への定期業務報告義務が法律に規定されていません。
複数社と一般媒介契約を結ぶ際は、1社だけでもレインズに登録してくれる不動産会社を選ばないと、どの不動産会社もレインズに登録しない事態が起こり得ます。
もちろん、法的な義務ではないとはいえ、レインズの登録を行い、売主へ定期業務報告をすることに制限はなく、どちらも対応してくれる不動産会社を選ぶべきです。
一般媒介には明示型と非明示型がある
複数社との契約が許される一般媒介では、契約社数が多くなるほど、各不動産会社にとって成約できないリスクも増します。
そこで、他の不動産会社との契約を通知する明示型と、通知しない非明示型があり、両者は通知義務を課す契約条項を入れることで区別されます。
標準媒介契約約款は、明示型の一般媒介契約となっているため、非明示型で使う場合には、明示型の根拠となる約款部分を不適用とし、明示する義務を負わないとする特約事項の記載が追加されます。
明示型の場合、契約しようとする不動産会社には、既に契約している他の不動産会社の存在を伝え、既に契約している他の不動産会社には、新たに契約する不動産会社の存在を通知しなくてはなりません。
その結果、明示型の一般媒介契約は、契約社数が増えるほど通知する回数も増えていきます。それが面倒なので、売主としては隠しておきたくなるでしょうか。
しかしながら、明示型で契約したのに、明示しない他の不動産会社で成約してしまうと、これは契約違反に該当します。代償として、費用償還の請求を受ける可能性がありますので、明示型で契約したらきちんと通知しましょう。
なお、ただでさえ不動産会社が力を入れない一般媒介契約を非明示型にするのでは、まともな営業活動は期待できないと思われます。
一般媒介のメリット・デメリット
一般媒介では、契約中であっても他の不動産会社と一般媒介で契約できます。この点は、頼れる不動産会社を探す上で大きなメリットです。
他社よりも先に成約させないと仲介手数料が発生しない一般媒介では、不動産会社同士を競争させることで、早期売却に繋がる可能性を持っています。
ただし、競争してまで売りたい魅力的な(人気エリアや相場よりも安い)物件でなければ、売れるかどうかわからないのに営業経費をかけてくれないでしょう。
ここが一般媒介のデメリットにも繋がり、頑張って売ってくれないばかりか、この価格では売れないとわかっている物件なら、他の物件を紹介するための「当て物件」に使われるかもしれません。
そもそも、複数社と契約したい事情は様々ですが、ほとんどが1社では頼りない、信用できないという理由です。契約行為はお互いの信頼で成り立つ原則から、売主が信用していない不動産会社に対し、売主を信用するように求めるのは酷です。
自分は不動産会社を信用できず一般媒介で契約しておきながら、タダ働きになるかもしれない不動産会社へ全力の営業を望むのは、常識的に考えて都合が良すぎるでしょう。
また、複数社と一般媒介することは、それだけ物件情報が早く拡散されていきます。これは優良物件ならメリットである反面、売れ残るとデメリットです。
というのも、複数の不動産会社から同じ物件が出ている→買い手の目に付きやすい→なぜ売れていないのか勘ぐってしまう→誰も手を出さなくなるという、売れ残り物件ならではの悪循環に陥ってしまうからです。
他にあるのは、複数社と契約していることで、値下げについても不動産会社の見解が変わってくる点、明示型で通知が面倒になる点が挙げられます。
媒介契約の違いを一覧で確認
これまで説明してきた3つの媒介契約を、ひとつの表にまとめると次のようになります。
専属専任媒介 | 専任媒介 | 一般媒介 | |
---|---|---|---|
複数社契約 | できない | できない | できる ※一般媒介契約のみ |
自己発見取引 | できない ※違約金請求の対象 | できる ※通知が必要 ※費用償還請求の対象 | できる ※通知が必要 ※通知を怠ったことで発生した費用は償還請求の対象 |
契約期間 | 3ヶ月以内 ※3ヶ月を超えても3ヶ月 | 3ヶ月以内 ※3ヶ月を超えても3ヶ月 | 制限はない ※標準媒介契約約款では3ヶ月以内 |
契約更新 | 依頼者の申出が必要 ※自動更新なし | 依頼者の申出が必要 ※自動更新なし | 特約に従う ※自動更新も可能 |
レインズ登録 | 媒介契約締結日の翌日から5営業日以内 | 媒介契約締結日の翌日から7営業日以内 | 登録義務はない ※登録することに制限はない |
業務報告 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 報告義務はない ※報告することに制限はない |
他社取引成立時 | 契約違反 ※違約金請求の対象 | 契約違反 ※違約金請求の対象 | 通知が必要 ※通知を怠って発生した費用は償還請求の対象 ※明示型で明示がない他社の場合は費用償還請求の対象 |
それぞれの違いはもちろんですが、通知義務、違約金請求の対象、費用償還請求の対象に注意してみると、意外に条件が異なると確認できます。
なお、違約金が発生するほど重大な契約違反では請求されるとしても、費用償還については請求されない可能性もあります。それでも、契約書に記載があれば請求は正当なので、最低限、通知義務等は怠らないようにしましょう。
媒介契約を選ぶ際のポイント
媒介契約の違いがわかったところで、媒介契約を選ぶ際に気を付けたいポイントを解説していくのですが、大前提として正解はないと思ってください。
それぞれの媒介契約が持つメリット・デメリットを、売主としてどのくらい受け入れるのかで、媒介契約選びも変わってきます。
売却に失敗するとしたら、媒介契約選びが間違っているのではなく、不動産会社選びを間違っているか、売り出し価格が相場よりも高い場合が多いでしょう。
重要なのは1社か複数社か選ぶこと
媒介契約選びは、売却依頼する(媒介契約を結ぶ)不動産会社を、1社にするか複数社にするか決めることに等しいです。1社にすれば専属専任媒介か専任媒介に絞られ、複数社にするなら自動的に一般媒介しかないからです。
そのため、なぜ1社にするのか、なぜ複数社にするのか考えることで媒介契約も決まってくるでしょう。両者の違いは次のような状況の違いになります。
専属専任媒介・専任媒介にしたい状況
- 不動産会社として信用できる
- 広告などから営業努力を感じる
- 担当者の人柄が良い
- 長年営業しており地域情報に明るい
- 売却まで長くかかっても問題ない
- 余計な手間が嫌で任せてしまいたい
- 買取保証付きの契約前提になっている
一般媒介にしたい状況
- 少しでも情報を拡散させたい
- 不動産会社を競合させたい
- 1社へ任せることに不安がある
- 不動産会社が決められず様子を見たい
- 囲い込みを防ぎたい
- 人気エリアの売れ筋物件
- 価格を下げても早く売りたい
- 不動産会社と対応する時間的余裕がある
専属専任媒介と専任媒介はどちらが良い?
専属専任媒介と専任媒介は同じような契約内容ですが、専属専任媒介のほうが制限は厳しくなっています。ただし、この場合の制限とは、売主が守る義務よりも不動産会社が守る義務に対する制限のほうがはるかに厳しいです。
具体的には、専属専任媒介で売主が自己発見取引を禁止されるのに対し、不動産会社はレインズへ登録するまでの期間が短くなり、業務報告の頻度も増えます。また、売主の制限は、自己発見取引を考えていない人には無関係です。
したがって、最初から自己発見取引があり得ないなら、専任媒介よりも専属専任媒介を選びたいところですが、不動産会社としては物件を独占できる期間が短く、営業マンの業務報告が増える専属専任媒介ではなく、専任媒介を勧めてくるかもしれません。
専属専任媒介を勧めてくると思ったら、専任媒介を勧められたというケースでは、不動産会社側の都合であることが多いのです。
人によっておすすめの媒介契約が違う理由
ところで、不動産会社の営業マンは専属専任媒介または専任媒介を、不動産の解説サイトは一般媒介を勧めることが多いです。それはなぜでしょうか?
不動産売却のプロである営業マンが正しいのか、利害関係のない中立的な解説サイトが正しいのか。どちらを信じるべきか迷ってしまいますよね。
不動産会社の営業マンは実績が欲しい
自己発見取引が禁止される専属専任媒介なら確実に、専任媒介でも売主が自己発見取引をしない限り、売買契約の成立で不動産会社には仲介手数料が入ります。
そこで、営業マンが(専属)専任媒介を取ってくることも、営業マンの能力として評価される側面があり、専属専任媒介や専任媒介を勧めてくるのです。
売れば確実に仲介手数料が入る(専属)専任媒介では、広告費を多くかけることができて、売った実績も営業マンの成績として残ります。
対して、営業経費をかけても自社で成約するとは限らない一般媒介は、誰がどう見ても飛びつくような物件以外は、不動産会社に何もメリットがありません。
不動産の解説サイトはアフィリエイト収入が欲しい
では、不動産の解説サイトが一般媒介を勧めるのはなぜかというと、解説サイトは媒介契約の当事者ではないので、所詮はどの媒介契約を推しても関係ありません。
しかし、あえて複数の不動産会社と契約する一般媒介を推すことで、サイトの訪問者が複数の不動産会社を使うことに好意的な印象を持ちます。
媒介契約の前には売却査定を受けるのが一般的ですから、一括査定サイトなどアフィリエイト広告へ誘導するのが解説サイトの目的です。つまり、訪問者をアフィリエイト広告へ向かわせたいだけの理由で一般媒介を勧めるのです。
媒介契約で後悔しても変更できる
媒介契約の契約期間は、専属専任媒介・専任媒介なら3か月、一般媒介に制限はありませんが概ね3か月が多いです。3か月経過時点で、不動産会社に不満があるなら契約を更新せずに終了すれば良いので、それほど深刻に考えるほどではありません。
そうはいっても3か月は長いので、最初は1か月で様子を見て、どのように営業してくれるのか確認した上で契約期間を延長するか、最初は一般媒介で契約して、信用できそうなら専属専任媒介や専任媒介に切り替えるのもひとつの方法でしょう。
そもそも、不動産の売却は媒介契約の種類よりも、立地や売り出し価格に影響を受けるため、地域の相場価格以下なら媒介契約に関係なく売れます。
様子見は短期間の一般媒介で行い、一般媒介でも比較的力を入れてくれる不動産会社なら、信用して3か月の専属専任媒介・専任媒介にするのが良さそうです。
ケース別で見る媒介契約の選び方
土地や家を売りたい事情は人それぞれです。全ての事情に最適な媒介契約は存在せず、ケースバイケースで使い分ける必要が出てきます。
複数に該当してしまう場合は、どちらを重視するかで決めるしかありません。
売る自信がある人気物件
人気物件はどの媒介契約でも売れると思いますが、専属専任媒介・専任媒介で囲い込みをされる可能性を考えると、一般媒介のほうが早く売れるかもしれません。
一般媒介で不動産会社が消極的になるのは、売れるかどうかわからないからで、直感的に売れるとわかっている物件ならどの不動産会社も扱ってくれます。
また、不動産会社にしてみれば、人気物件を扱うことで集客効果もありますから、一般媒介だからといって断る不動産会社も少ないでしょう。
ただし、自分で売れると思い込んでいるだけで、不動産会社視点では売れると確信できないような物件では、専属専任媒介・専任媒介のほうが確実です。
人気がない立地・値下げをせずに高く売りたい
運よく売れたらラッキー、価格が妥協できないなど、最初から簡単に売れないことを覚悟しているなら専属専任媒介・専任媒介です。
売れにくい物件には、少しでも営業に力を入れてもらわなければならず、営業努力が期待できない一般媒介は適していません。
なお、不動産は所有するだけで税金がかかるので、値下げをしないで長期間売り出すと、結局売れたとしても税金の持ち出しが多くなります。また、建物は売り遅れるほど価値が下がって、ますます売れにくいのが難点です。
そのくらいなら、値下げして早く売ったほうが、最終的には得をしたかもしれないケースも出てくるので、長期戦の売却では気を付けたいところです。
値下げしても良いので早く売りたい
基本的に、不動産は相場よりも低い価格なら売れるため、価格にこだわらず値下げできるケースでは、特に媒介契約の種類は問いません。
専属専任媒介・専任媒介では囲い込みのリスク、一般媒介では複数社と同時に値下げ調整をするのが面倒という点があり、どちらも一長一短です。
ただし、囲い込みをされても売れる物件はすぐに売れますし、複数社との値下げ調整も短期間ならそれほど苦にならないでしょう。ですから、値下げという最強の手段を使えるのなら、あまり考えずにどの媒介契約でも売ることはできます。
また、買取保証を付けてくれる不動産会社では、もし売れなくても最後は不動産会社が買い取ってくれるので、価格は安いですが決められた期間までに売りたいときは便利です。
なお、買取保証付きになると、専属専任媒介・専任媒介となるのが通常です。
どの不動産会社にしたら良いか迷っている
初めて不動産を売りに出すときや、不動産会社への不信感が強く迷っているとき、不動産会社の選び方としてある程度のセオリーはあります。
※不動産会社の選び方は別記事を用意します。
媒介契約の面から見ると、売主が1社に縛られる専属専任媒介・専任媒介は、契約期間中に全く身動きが取れなくなってデメリットが大きいです。
しかしながら、営業努力を期待できない一般媒介もデメリットが大きいので、まずは数社に短期間の一般媒介でお願いして、マトモに取り扱ってくれる不動産会社なら、専属専任媒介・専任媒介に切り替える方法も有効です。
レインズへの登録義務や業務報告義務がない一般媒介だからこそ、きちんと対応してくれる不動産会社を絞り込みやすいからです。
まとめ
媒介契約は、それだけで仲介手数料が発生するものではないので、どの不動産会社も売買契約を成立させて仲介手数料が欲しいのは間違いありません。
そうはいっても、一般媒介で契約した物件まで頑張って営業した結果、他社で成約されたのではたまったものではなく、一般媒介は売主から「おたくは信用していません」という意思表示をしてしまっていることは覚えておくべきです。
一方、専属専任媒介・専任媒介は、不動産会社が「ウチを信用してください」ということなのですが、不動産業界と言えばイメージが悪いことで知られるように、任せて大丈夫なのか? と不安になりますよね。
ですから、最終的に専属専任媒介・専任媒介とする目的での一般媒介、不動産会社の変更も視野に入れた専属専任媒介・専任媒介ならともかく、数打てば当たるつもりの一般媒介や、手抜きで任せる専属専任媒介・専任媒介では良くないでしょう。