瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い~売主のリスクは拡大

令和2年4月1日から施行された民法では、契約不適合責任が新たに盛り込まれました。

改正前に規定されていた瑕疵担保責任が廃止され、瑕疵担保責任と契約不適合責任との違いは、不動産取引においても影響の大きい改正となっています。

契約不適合責任は、瑕疵担保責任を実務上の運用に合わせたともいえますが、買主の請求権が瑕疵担保責任よりも拡大されています

必然的に、売主のリスクも拡大しますので、契約不適合責任をきちんと理解しておきましょう。

本記事は、売主と買主のどちらも個人のケースを前提としています。

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改正前民法と瑕疵担保責任の考え方

改正前民法の瑕疵担保責任とは、売買された不動産に瑕疵(不具合・欠陥)があり、その瑕疵が「隠れた瑕疵」だった場合に、買主から契約解除または損害賠償請求を認めていました。

隠れた瑕疵とは、買主が通常の注意を払ったにもかかわらず、発見できなかった瑕疵をいい、買主が瑕疵を知ってから1年以内が、瑕疵担保責任を売主に追及できる期間です。

改正前民法 第五百七十条(令和2年3月31日まで)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

改正前民法 第五百六十六条(令和2年3月31日まで)
売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。

2 (略)

3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

このように、瑕疵担保責任は契約解除と損害賠償請求の構成ですが、隠れた瑕疵が見つかった場合に売主が修繕に対応する特約や、瑕疵担保責任を不動産の引渡しから一定期間に制限する特約で対応していました。

というのも、隠れた瑕疵が見つかった場合、契約解除になってしまうと売買契約までの労力が無駄になりますし、買主がいつ隠れた瑕疵を知るかわからないため、遠い将来まで売主にリスクを負わせるのは酷だからです。

瑕疵担保責任の伝統的な通説は法定責任

瑕疵担保責任の法的性質には、学説上の激しい争いがありますが、古くから法定責任とする解釈が通説の一つになっていました。

法定責任説では、売主が瑕疵のある不動産を引き渡しても、債務不履行にならないとされます。

なぜなら、どのような不動産でも同じものが二つ存在しない、つまり、瑕疵のない新品と交換などの対応ができない不動産では、売主が瑕疵のある不動産をそのまま引き渡す以外に債務履行の方法がないからです。

このような考え方を「特定物ドグマ」と呼びます。

瑕疵のない不動産が存在しないので、最初から引渡し不能なのであって、瑕疵のない不動産の引渡しを前提とした売買契約は、最初から一部無効だとされます。

したがって、瑕疵のある部分(売買契約の無効部分)を除いた不動産の引渡しは完了しているのだから、売主に債務不履行はないとする考え方です。

ところが、買主にとっては売買契約時に期待していた機能や品質が、引き渡された不動産に備わっていないと、売主を信頼して購入したのにたまったものではないですよね。

そこで、買主に過失がない「隠れた瑕疵」については、買主の不利益を是正するため、売主の責任を特則として法定したのが瑕疵担保責任だと解釈されたのです。

契約不適合責任の考え方は契約責任

契約不適合責任は、「契約に適合していない不動産を引き渡した場合は、そもそも契約を果たしたことにならない」というシンプルな考え方に基づいています。

もちろん、売買契約時に瑕疵がある不動産だと合意していたのなら、その瑕疵を含めた想定どおりの売買がされており、不適合の問題は生じません。

もっとも、瑕疵の程度について、売主と買主の認識に大きな相違があれば争いになると思われます。

しかし、売買契約時に合意されていなかった瑕疵が、不動産の引渡し後に見つかったときは、契約時の想定と異なる不動産が引き渡されたことで契約との不適合が生じ、これを売主の債務不履行としているわけです。

契約不適合責任では、瑕疵担保責任における法定責任説の特定物ドグマが否定され、売主の責任は債務不履行の一種として一元化されました。

このような考え方を、法定責任に対して契約責任といいます。

瑕疵担保責任も実務上は契約責任で対応していた

前述のとおり、瑕疵担保責任の契約解除と損害賠償請求だけでは、引渡し後のトラブルに対応しにくいため、実務上は、売主負担での修繕等を特約とする例が多くありました。

つまり、修繕費用または瑕疵による減価分を、買主から損害賠償請求するよりも、売主負担での修繕等が現実的なケースも多かったということです。

これは、対象が隠れた瑕疵に限定されるとはいえ、瑕疵のある不動産を引き渡した売主の契約責任を、特約で実現していたといえるでしょう。

契約不適合責任と買主の請求権

契約不適合責任では、引き渡された目的物の種類・品質・数量について売買契約に適合しない場合、買主からの請求権が規定されています。また、売買により売主から買主に移転する権利についても、請求権の規定が準用されます(民法第565条)。

改正前民法において、数量不足と権利は瑕疵担保責任とは別に担保責任が規定されていましたが、契約不適合責任には全て含まれています。

契約不適合の範囲は、売主と買主の合意内容に左右されケースバイケースとなりますが、事例を示すと買主に告知されなかった次のようなケースです。

内容契約不適合の具体例
種類
  • 地目が異なっていた
  • 住宅の売買で倉庫が引き渡された
  • 品質
  • 雨漏りやシロアリ被害が見つかった
  • 新耐震基準のはずが耐震性に問題があった
  • 土壌汚染や埋設物が見つかった
  • 数量
  • 筆数や面積が異なっていた
  • 集合住宅の戸数が異なっていた
  • 権利
  • 所有権移転のはずが借地だった
  • 追完請求権

    買主は、契約不適合に対して、①不動産の修補、②代替物の引渡し、③不足分の引渡しによる履行の追完を請求できます。もちろん、目的は引き渡された不動産を契約に適合させるためです。

    民法 第五百六十二条
    引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

    2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

    追完の方法は、買主の選択を原則としており、買主に不相当な負担を課するものでないときに限り、売主は追完の方法を選択できます。

    なお、買主の帰責事由による不適合は追完を請求できません

    追完請求には、売主の不完全な履行に対する完全履行の請求と見るのか、買主の救済手段と見るのかで学説上の争いがあります。

    売主の履行が不完全だとすると、買主の帰責事由とは無関係に完全な履行を請求できるはずですが、実際には買主に帰責事由がないことを要件としているため、買主の救済手段(契約からの解放)だとする見解が有力です。

    代金減額請求権

    追完請求は、全ての契約不適合に万能ではありません。

    例えば、引き渡された土地の面積が足りず、買主の予定していた建物が建てられない場合、修補で対応できないのは当然として、代替物は存在せず、不足分の面積を引き渡すこともできませんよね(隣地が売主の所有ならできるでしょうが)。

    追完では解消できない契約不適合や、売主が追完に対応しないなど、追完請求では契約の目的が達成できない場合は、買主から不適合に応じた代金の減額を請求できます

    民法 第五百六十三条
    前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

    2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

    一 履行の追完が不能であるとき。

    二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。

    三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。

    四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

    3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

    代金減額請求は、相当の期間を定めて追完を催告することが前提条件となっており、無催告での代金減額請求は制限されています。

    それでも、無催告での代金減額請求を規定した民法第563条第2項には、いずれも追完請求では不適合を解消できないケースが列挙されていますので、買主が判断に迷うことは少ないでしょう。

    また、追完催告の有無にかかわらず、買主の帰責事由による不適合では代金減額を請求できません(代金減額の請求以前に追完催告もできませんが)。

    損害賠償請求権

    損害賠償請求は債務不履行の一般規定にしたがい、買主は、契約不適合によって生じた損害の賠償を売主へ請求できます

    民法 第五百六十四条
    前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

    民法 第四百十五条
    債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

    2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

    一 債務の履行が不能であるとき。

    二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

    三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

    ただし、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由」のときは損害賠償請求できません(債務者とは売主です)。

    つまり、契約と取引上の社会通念に照らしたうえで、売主の帰責事由を必要とするため、損害賠償請求が可能かどうかは個々の取引事情で判断が分かれます

    この点、売主の帰責事由を問わない瑕疵担保責任とは明確に異なるので注意してください。

    また、売主に帰責事由があると、たいていは買主の帰責事由はないと考えられますが、双方に帰責事由がある場合に過失相殺できるかどうかは問題になりそうです。

    契約解除権

    契約解除には、催告解除と無催告解除の2種類あります。

    催告解除

    民法 第五百四十一条
    当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

    買主が、相当の期間を定めて追完請求しても売主が対応しないときは、買主から契約を解除できます。ただし、契約不適合が「契約及び取引上の社会通念に照らして」軽微なときは契約解除できません

    どの程度の不適合が軽微に該当するのかは判然とせず、契約解除権の行使にあたっては、軽微についての主観的な捉え方で争う可能性が十分にあるでしょう。

    無催告解除

    代金減額請求と同様に、追完では解消できない契約不適合や、売主が追完に対応しないなど、追完請求では契約の目的が達成できない場合は、買主から追完の催告をせずに契約を解除できます

    民法 第五百四十二条
    次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。

    一 債務の全部の履行が不能であるとき。

    二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

    三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。

    四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。

    五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

    2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。

    一 債務の一部の履行が不能であるとき。

    二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

    買主に帰責事由があると契約解除できない

    追完請求、代金減額請求と同じく、買主に帰責事由があると契約解除できません

    民法 第五百四十三条
    債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

    契約不適合責任による買主の請求可能期間

    瑕疵担保責任では、買主が隠れた瑕疵を知ってから1年以内に、契約解除または損害賠償請求をしなければなりませんでした。しかし、契約不適合責任では、不適合の内容によって請求可能期間が異なります。

    まず、不動産の種類または品質に関する不適合では、買主が不適合を知ってから1年以内に売主へ「通知」しなければ請求権は失われます。

    民法 第五百六十六条
    売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

    重要なのは、売主への1年以内の通知であって請求ではありません。つまり、種類または品質の不適合は、1年以内に売主へ通知しておけば、請求権が保全されるといえます。

    そして、不適合を通知後に請求権を行使できる期間は、一般の消滅時効規定(民法第166条第1項)により、不適合を知ってから5年間または引渡し時から10年間です。

    一方で、数量や権利が不適合のときは、不適合を知ってから1年以内の通知要件はなく、請求権を行使できる期間は、不適合を知ってから5年間または引渡し時から10年間となります。

    数量や権利の不適合は、不完全な履行だと売主も容易に認識できるはずで、買主の請求権を通知要件によって制限する必要性は乏しいと考えられています。

    ただし、不動産の種類または品質に関する不適合でも、売主が引渡し時に不適合を知っていたか重過失で知らなったときは、不適合を知ってから1年以内の通知要件は適用されません

    悪意や重過失のある売主に、通知がなければ免責してあげる必要がないのは当然ですね。

    契約不適合責任の免責

    契約不適合責任は、売買契約時の特約によって全部または一部を免責することができます。また、請求可能期間についても、一定期間とすることは自由です。

    例えば、追完請求だけ認める特約、契約解除は認めない特約、全部を免責する特約、引渡しから〇か月間・〇年間など、当事者が合意して契約を締結することに制限はありません。

    とはいえ、契約不適合責任の全部が免責されるのは、建物の売買で解体か大規模リフォームを予定している買主など、特殊な事情がある場合に限られると思われます。

    なお、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を免れることはできないとされているので、不適合を隠した場合、知っていて告げるのを忘れていた場合は、特約でも免責されないので注意してください。

    民法 第五百七十二条
    売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

    契約不適合責任の注意点

    契約不適合責任は、瑕疵担保責任よりも売主のリスクが拡大しています。注意点を売主と買主に分けて説明しますが、どちらの立場でも知っておくべき内容です。

    売主の注意点

    損害賠償請求以外は売主が無過失でも可能

    契約不適合責任では、損害賠償請求以外で売主の帰責事由は問われません。

    ということは、売主に過失がないにもかかわらず、契約不適合を理由として追完請求、代金減額請求、契約解除のリスクがあるということです(不適合が軽微なら契約解除は不可)。

    売主としては、契約不適合を主張されるリスクを少しでも減らすため、対象不動産の情報については可能な限り提供するしかありません。

    また、争いになりそうな瑕疵が存在するときは、買主が瑕疵を認めて売主が責任を負わないとする文言(容認事項)を定めておきましょう。

    損害賠償での信頼利益と履行利益

    法定責任説における瑕疵担保責任では、損害賠償の範囲が信頼利益(瑕疵がないと信じたために生じた損失)でした。

    しかし、契約不適合責任での損害賠償の範囲は、履行利益(不適合がなければ買主が得ていたはずの利益)にも及ぶと考えられており、事案によっては瑕疵担保責任よりも高額になる可能性があります。

    どの程度の損害賠償請求が認められるのかは、判例の積み重ねで定まっていくことになるのですが、引渡し後の使用収益や転売等の利益まで考慮されると大きな請求になりかねません。

    そのため、損害賠償請求の要件である「売主の帰責事由」には十分に気を付けたいところです。

    同時履行の抗弁権

    同時履行の抗弁とは、売主が不動産を引き渡さなければ買主は代金の支払いを拒むことができ、買主が代金を支払わなければ売主は不動産の引渡しを拒むことができる規定です(民法第533条)。

    契約不適合責任は、不適合を売主の債務不履行とする考えに基づいていますので、理論的には、不適合が解消されるまでの間、買主が(少なくとも不適合に相当する)代金支払いを留保する主張が考えられます

    一般に、不動産取引は代金の受領と物件の引渡しが同時に行われるので(厳密に同時ではないですが)、同時履行の抗弁権を主張するケースは少ないと思われますが、一応頭には入れておくべきです。

    買主の注意点

    引渡しを受けたらなるべく早くチェックする

    買主は、不動産が引き渡されたら、できるだけ早く不適合がないかチェックしましょう。

    なぜなら、売買契約時の特約により、契約不適合責任が消滅時効(5年・10年)にかかるまで存続するケースは少ないと思われますので、不適合の発見が遅れると、請求可能期間を過ぎてしまうかもしれないからです。

    また、建物は経年劣化が避けられず、引渡しから時間が経過するほど、契約不適合と経年劣化の区別が付きにくくなります。

    売主には追完する機会を与えるべき

    追完の方法は、買主に一次的な選択権がありますが、だからといって、追完請求前に買主が自ら不適合を修繕した場合、負担した修繕費用を売主に請求できるのでしょうか?

    買主が負担した修繕費用は、売主が追完請求されていたら負担したであろう費用ですから、売主へ請求することには正当性があります。

    しかし、買主が負担した修繕費用よりも、売主による修繕費用が(手配する業者の違いなどで)安い場合が考えられ、そうなると、売主へ追完請求せずに修繕した買主の判断ならびに修繕費用を巡ってトラブルになるでしょう。

    追完可能な不適合は、売主への追完請求を優先するほうが安全だといえます。

    代金減額請求と契約解除の選択

    契約解除は、追完可能な不適合では追完請求を前提としており、追完不能な(または見込みのない)不適合では催告を要しません。

    この点は、代金減額請求と要件がほぼ一致しますので、追完請求では不適合が解消されない場合、買主は代金減額請求と契約解除を選択できる状況が訪れます。

    しかし、代金減額請求は契約を継続する(不動産を残す)前提なのに対し、契約解除は契約を無かったことにする(不動産を手放す)ので、同時請求はあり得ません。

    特約での免責がなく、代金減額請求と契約解除のどちらも選択できるときは、不動産の重要度や契約目的の達成度に応じて慎重に対応すべきでしょう。

    まとめ:瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

    瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いを一覧にしてみました。瑕疵担保責任と同等に比較するため、数量と権利の契約不適合は除いています。

    瑕疵担保責任契約不適合責任(種類・品質)
    法的性質伝統的な通説は法定責任、近時は契約責任も有力契約責任
    要件隠れた瑕疵(買主の善意無過失)契約との不適合(買主の善意無過失は問われない)
    買主の救済手段損害賠償請求、契約解除追完請求、代金減額請求、損害賠償請求(売主の帰責事由が必要)、契約解除(軽微な不適合を除く)
    買主の請求期間隠れた瑕疵を知ってから1年間不適合を知ってから1年以内に売主へ通知した場合は、不適合を知ってから5年間または引渡しから10年間
    損害賠償の範囲信頼利益(瑕疵がなければ発生しなかった買主の損害)に限る履行利益(不適合がなければ発生していたであろう買主の利益)に及ぶ

    買主の救済が強化された契約不適合責任は、売主に過失がなくても追完・代金減額・契約解除を請求でき、売主に過失があると損害賠償を請求でき、売主が知っていた不適合は免責できないという売主に厳しい規定です。

    売主としては、過剰に説明する必要はないですが、契約不適合責任を問われかねない点について、不動産会社と相談のうえ、買主へ伝える内容に漏れがないように努めるしかないでしょう。

    要するに、包み隠さず誠実に対応していれば、思わぬ請求にはなりにくいということですね。

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